■ハワード・シュルツ 「スターバックス成功物語」  日経BP 2000/12/3

  題名がいやらしい。この手の本を読むのははじめてだ。
 貧しい境遇に育ったから、「自分は社員を大事にする会社にするんだ」と言い聞かせ、パートにまで保険をかけるなどしている。社員にも自社株購入権を与え「パートナー」と呼ぶようになった。それによって、優秀な人材が集まるという。はやりのリストラとか経費節減の動きを、「社員の意欲を失わせ、結果的に生産も落ちる」と指摘するあたりも、リストラしか考えられない日本の大部分の経営者とはさすがにスケールが違う。でも、雇用しているのは、「優秀な人材」であり、子供のころに周囲にいた貧しい人々ではない。会社の経営上それは仕方ないことではあるけれど、大金持ちの慈善家的ないやらしさも感じた。

−−−−−−−−−【要約・抜粋】−−−−−−−−−

 アメリカの食事はまずい。コーヒーはウスウスでさらにまずい。アメリカで消費されるコーヒーはほとんどが品質の落ちるロブスタ種で、良質なアラビカ種はごく少数だった。
 カフェラッテという名を知っているアメリカ人はあまりいなかった。
 本格コーヒーへの欲求が高まり80年代末にはスーパーでのコーヒー豆販売が急増した。
 スターバックスの成功をまねた店も増え、コーヒーショップの数は、92年の500軒が99年には1万店と予測された。
 世界中で開発援助をするNGOのCAREに資金を提供している。コーヒー産出国への恩返しという意味があるが、94年にグアテマラの活動家グループがスターバックスに抗議の手紙を送るキャンペーンを始めた。労働運動グループが、店頭でビラを配り始めた。「農園労働者は、豆1ポンドあたり2セントの収入しかない。なのに同じ豆を最高9ドルで販売している」という内容だった。だが、値段は国際商品取引価格で定められた値段で、社の仕入れ量は世界のコーヒーの0.05%に過ぎない。直接農園をもっているわけではないから、労働者の賃金などを監視することはできない。その後、97年から、零細農家を援助することを始めた。
 顧客のコメントに「スターバックスは社交的なところだ。ここに来るのは社交的な雰囲気を味わうためだ」とあったのに、実際だれかに話しかけてるのは1割にも満たなかったという。
 その昔、欧州でも日本でも喫茶店は社交の場だった。人のつながりをもとめる心が芽生えてきたためなのか。「社交の場としての喫茶店」を取り戻すべき時なのか。憩いの場を求める欲求が高まっているのは事実だろう。
  ▽存在するものだけを見て「なぜそうなのか」と考える人もいるが、私は存在しないものを夢見て「なぜそうでないのか」と考える。チャンスがなかったという人は、おそらく一度もチャンスをつかまなかったのだ。
  ▽成功する人にはひたむきさが感じられる。そういう人は全力でリスクに挑戦する。

■小菊豊久 「マンションは大丈夫か」 文春新書 2000/12/5

 マンション選びはいかにするか、という視点で読むとそれなりに読める。が、あまりおすすめはしない。どうせなら、後述の文庫本を買った方がよい。以下抜粋。
 ▽アメリカでは、構造・躯体だけを売り、内装工事は買った人がするもの、となっている。
 ▽鉄筋コンクリートは150ミリ以上、断熱材は25ミリ以上、プラスターボードは12.5ミリ程度。かぶり厚は3−5センチ以上 スラブは80年代半ばまでは150ミリが主流。いまは180ミリが標準。階高は少なくとも3メートル
 ▽住宅性能表示制度。第3者機関が客観的に評価し表示する。戸建てで15-20蔓延 ・管理費を駐車場料金や修繕積立金から出している例も

■稲葉なおと「不動産営業マンに負けない本」 講談社α文庫 2000/12/8

 不動産という世界のごまかしの手口や、広告の裏読みの方法がわかっておもしろい。モデルルームを2,3見て回っているうちにノウハウものは本をいくつか読んだが、たぶんこの本が一番、業者に遠慮なく書いていている。
 以下は抜粋。
  ▽「先着順、全戸公庫付き」という宣伝の意味
 「公庫付き」と書かれたマンションだけが、住宅金融公庫によって細かな指導がある。「公庫利用可」とか「公庫融資適格住宅」というのは、指導や審査はほとんどない。  「公庫付き」の場合は、売り方も、抽選で購入者を決めるよう義務づけられている。登録申し込みで埋まらなかった場合に「先着順」となる。つまり「売れ残り」という意味だ。
 ▽モデルルームで決めず必ず閲覧設計図書を見よう。
 ▽中古マンションの場合、給水管の傷みなどは、業者の説明義務にはない。
 ▽給湯可能な蛇口をすべて同時に開いて湯の勢いをチェック。換気扇もたばこの煙をかざして確認。給湯機は、24号タイプが主流。
 ▽検討段階では「重要事項説明書」のコピーを用意させる。
 ▽中古売買には、売買の対象となる付属物のリストおよびその整備状況を記した書類を添付させる。
 ▽「売買価格×3%+6万円」は手数料の上限額。
 ▽チラシを観察し、間取りの書いてある本体と、帯状の部分との間に微妙なずれがあれば、他の業者から横流しされた先物チラシだ。直物のチラシをみつけよう。

 「取引態様」の欄に、「専任媒介」とあれば直物、「媒介」というのはいろんな業者が混在している。
 ▽日常清掃業務だけでなく、共用部全体を集中的に掃除する定期清掃業務について、どの窓ガラスまで掃除するかという範囲や頻度を調べる。いっさい無いところもある。
 ▽「管理規約」「管理委託契約書」の入手を営業マンに指示。
 ▽全住戸の管理費の滞納状況を営業マンに報告させる。滞納者へのペナルティを調べさせる。。

■魚柄仁之助 「儲け道」 メディアファクトリー 2000/12/6

 会社員だって個人商店や、って気概がなきゃあかんで。自分で生きていく術をきちんともちなはれ、それに必要なちょっとした心がけを教えたる……、という内容の本だ。
  ビクっとしたのはこんな記述。「フリーになりたいと言ってた知人の新聞記者がいたけど、20年やってるけど専門も何もなく、出版社との関係づくりもしとらん。相変わらず『記者』をしている」。アチャー、俺のことやんか。いつでもフリーになれるくらいの準備はしておこう、と口では言っているけど、まだ何もできてないもんなあ。
 日々の生活のなかで、布石を打って置かなあかん。魚柄さんは、自転車屋から古道具屋、文筆業……と変えてきているけど、始める前には綿密にデータを集め、いろんな店に行っては、どのくらい経費がかかって利益はどれほどあるのかシュミレーションし、職人の技を目で見てできるだけ盗み……とやっている。
 それを僕の立場に置き換えると、売り込める雑誌のリストアップと人脈づくり、それぞれの雑誌に合わせた文体の研究、プレゼンテーションの仕方……、というのを今から準備することなのだけれど、日々の取材で精一杯で、なんもやってへんなあ。
 元手をかけず、経費をかけず、しかも他人がやっていない商売をどう探すか。
 軽自動車1台でカレーの移動販売をするとか、原価の安いオカラを使ってオカラポテトサラダやらオカラボール揚げやらの料理を作るとか、モツをタダ同然に仕入れて格安の焼き鳥にするとか、よおまあ考えつくわ、というようなアイデアが盛りだくさんだ。
 ▽古物商取引証は、警察で簡単に取れて、古物市場に参加できるようになる。そこで仕入れてフリーマーケットなどで売る……
 ▽どんな職場でも店でも、その気になって物事を見ればビジネスのヒントはごろごろ。
 ▽旅館で1000-2000円の「心付け」をするだけで、対応は雲泥の差。
 ▽マンションより、毎年実りをもたらしてくれる農地を持っとった方が、本当の資産に思えますど。
 ▽「まず自分が動くときに、なんぞ『ものはついで』がありゃせんやろか、と考えてみる事です」。〓そうだよな、出張とかでせっかく見知らぬ土地に行くのに、取材だけで終わるのはもったいない。前もってその土地の事を調べて、料理屋にでも行くだけで随分違ってくるだろうな。

■渡部昇一「知的生活の方法」講談社現代新書 2000/12

 軽蔑すべき文化人だが、学生のころに渡部に心酔しているという友人に勧められて読み、へぇ、こんな考えもあるのか、と感心したのを覚えている。佐高信が書いているのを見て、もう一度、古本屋で買ってきた。
 以前読んだときより感心する部分は少なかったけど、それでも、「自分の古典を作れ」という部分はなるほどと思った。時間の間隔を置いて繰り返して読む本に出会えたら、相当に大きな人生の幸福と言ってよい。あなたの古典がないならばいくら広く多く読んでいても読書家とは考えたくないと述べる。そのへんは僕の読書で足りない部分でもある。
 「いつか読んだ本がふと読みたくなることがある。その瞬間が極めて大切である」(抜粋)。手元にないことによって、感興が消えてしまい、せっかく吸収できる機会を逃したことになってしまう。
   「専門的な勉強だけでは知的生活は不十分である。知的関心を持つ人との肩のこらない交流と、特定の目的に束縛されない自由な読書のための時間が必要だ」(抜粋)。目的遂行型ばかりにならないように、ということだ。  あとはカードの使い方やら書斎の作り方やらも参考になりそうだ。
 京大カードは学生時代に使っていたが、結局モノにならなかった。今はデータはパソコンに入れておけばよい。だが、1つの本のアイデアとかを思いついたらカードに書き込んでいき、ある程度たまったら本にしていくのはよいかもしれない。パソコンに入れてしまうと、どうも文章の構成とかを考えられなくなるような気がするから。