■田中長徳「デジカメだからできるビジネス写真入門」 岩波アクティブ新書 0212
デジカメの方がシロウトでも商売に使える写真が撮れるという。デジカメは難しいと思って敬遠していたから、意外な指摘だった。
レンズの焦点距離が短いからピントが合いやすいというのがその理由だ。地図の複写などもボケないしぶれない。そのぶん背景をボケさせるのは難しくなるんだろうけど。
銀塩カメラでは、色温度の問題で日陰では顔が青っぽくなってしまい難しかったが、デジカメだとオートホワイトバランスがあって簡単という。「色温度」の問題さえ今まで理解してなかったから勉強になった。
■辺見庸「単独発言」角川書店 1100円 0212
「世界のあらゆる国は決断しなければならない。われわれとともにあるか、そもなくばテロリストといっしょになるかだ」というブッシュの発言を引用し、「私は9.11のテロリストといっしょではないが、中間領域がないとされている以上、ブッシュの敵であり、ブッシュは私の敵であるらしい」「ブッシュの言う『善』『正義』は、巡航ミサイルを何百発も発射し、燃料気化爆弾(デイジーカッター)、クラスター爆弾などの残虐兵器をこれでもかと投下することだ。デイジーカッターは1発で野球場5つ分の範囲の人と物をすべて殲滅した」ととく。
抽象的な「善」や「正義」に踊らされるのではなく、血や硝煙のにおいがただよう具体的な表現におきかえる。その営みが今のマスコミにいかに不足しているか、と問いかける。
死刑制度もそうだ。泣き叫ぶ死刑囚を刑場にひきだし、首に縄をかけ、床板がはずれ、汚物をたれながしながら、ついさっきまで生きていたヒトがぶらさがる。そういう具体的なシーンを想像すれば、それがいかに恐ろしいことか実感できる。なのに、抽象的な「正義」をふりかざし、具体的な実感がないままに「死刑」の書類に判を押す大臣や官僚がいる。
存在そのものが罪なのではない。行為が罪なのだ。だとしたら、存在を消してしまう極刑はあってはならない、という哲学からのアプローチも不可欠だという。
そういう想像力の欠如は、報道機関をも覆っている。
たとえば個人情報保護法は、「報道機関」だけに特権を与え、フリーを排除することになる。なのに、大新聞は矛を収めようとしている。メディア間に上下のヒエラルキーを作りだし、権力にとって扱いやすい大マスコミに特権を与えて取り込もうとしている。
個々人が「想像力の射程を広げる」しかないのだろう。
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▽「個人情報保護法」「人権救済機関」「青少年有害環境基本法」は言論弾圧のための3点セットであり、有事対応や国家の情報統制機能の拡大などとからめてとらえなおす必要がある。
▽「職能基準制」を設け、「デスクの意図を理解し狙いに即した企画記事を書くことができる」「経営の現状を把握している」といった基準を明文化している。……ジャーナリズムの本質にかかわるものはいっさい入っていない。……露骨に「権力批判はやめろ」とは誰も言わない。そうではなくて、情熱喪失・自己規制・機能停止状態になっていく。集号的な無意識の結果だ。
■兼子仁「自治体・住民の法律入門」岩波新書 02/03/20
法律の条文の説明が多く退屈だが、実務には役立つかも。地方自治体を取材するうえでのマニュアルの1つにはなるかもしれない。
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▽2000年の学校教育法施行規則改正で、各学校に校長推薦で委嘱される「学校評議員」が置かれた。だが同時に、職員会議が「校長の職務の円滑な執行に資するため」の機関と書かれ、学校長集権主義に。
▽行政手続法 「行政指導を文書にする法律」と報じられた。 ▽労組の集会を「管理上の支障」と会場の使用不許可とした。最高裁は「警察の警備などによってもなお混乱を防止することができないなど特別の事情がある」という状況じゃなければ違法だと解した。
▽行政が新しいマンションに「給水拒否」をした場合……。
▽自転車は車両なのに歩道通行が例外的に許されるようになったが、「当該歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければならない」とされた。
▽使用禁止のニコチン酸を使った店名の情報公開を求めたところ、非公開でよいと結論した。でも、食品営業の違反処分の情報公開は住民生活には重要だ。
▽介護保険によって、不服申し立ては県の介護保険審査会に、民間介護サービスへの苦情は、国民健康保険団体連合会にだせるようになった。
■E.シュローサー「ファストフードが世界を食いつくす」草思社 2002/3/12
ファストフードの蔓延がいったい何をもたらしたのか、何年にもわたる綿密な取材で検証する。資本主義の牙城・米国で進展する「自由化」の流れのなかで、だれが得をしてだれが没落したのか、生産現場から消費者までの各段階を1つ1つ確かめると、恐るべき実態が見えてくる。
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▽自動車業界が鉄道やトロリーバスの会社を買収してつぶすことで、米国のモータリゼーションが進んだ。
▽ディスニーとマクドナルドの類似点は「環境を管理し、支配し、清潔に保つ」ことや、労働組合は徹底的に弾圧すること。新保守主義的な感性を昔から持ち合わせていた。ウォルト・ディズニーは第2次世界大戦中、軍の広報番組を盛んに作っていたという。
▽学校の「経営」を要求されるなかで、校内の売店で売る飲料を、コカコーラなどとの独占契約を結ぶことで広告収入を得る動きが出てくる。教室持ち込みさえ認めさせようとする。一番損をするのは子供だ。清涼飲料水をかつての3倍のむようになり、牛乳と清涼飲料水の消費量はここ30年ほどで逆転した。学校で「COCA」の人文字を作らせることをおちょくってペプシのTシャツをのぞかせた高校生は停学処分をくった。企業がスポンサーになっている授業では「石油燃料などの化石燃料は環境によい」と教える。
▽「競争」の激化で人件費はどんどん安くなる。未成年と移住労働者ばかりになる。高校生のアルバイトは疲れ切って勉学さえ手を付けられない子が増えた。組合を作る動きがあれば徹底的に弾圧・懐柔し、それでも結成されたら店をつぶす。
▽1.5ドルのフライドポテトのうち、農家にはわたるのは2セント。コスト引き下げ競争によって、農薬や化学肥料をつかって生産性を高めてきた。だが、多くは大農園に吸収されて、階級の分化が進んでいる。フライドポテトは牛脂を使っているためハンバーガーより脂が多い
▽牧場も安値競争にさらされて階級の分化がすすむ。レーガン政権の規制緩和もあって大手4社で84%という寡占状態になってしまった。
▽チキンマックナゲットの登場で、養鶏農家の大半が農奴同然になった。加工業者の立場が強くなり、生産者は個々に買いたたかれる。「1対1の契約」に追い込まれ、弱者が孤立化していっている。
▽大手製に業者のIBPの工場のあるレキシントンでは、凶悪犯罪が倍増している。労働者のグアテマラ先住民の一家は地下室に住まうなど、劣悪な環境に置かれている。競争の激化でラインのスピードも速くなる。IBPが早くすればほかもそれに追随しなけらば競争に勝てない。
▽大規模化。糞尿まみれの肉が流通することによってo157が広まった。「便座よりもはるかに多くの糞便細菌が、キッチンの流しから見つかった」という報告さえある。なのにレーガンは検査の予算も人員も減らし、業界に好き放題させた。
▽HACCPプランというのは、生産から流通にいたる全段階の検査をするというやりかただ。集団食中毒事件をおこしたジャックインザボックスが導入した。食肉業者には15分に一度の細菌検査を義務づけている。今は逆に、ファストフードにたいしては厳しい検査をしておろすのに、一般向けには検査しない、という人が増えているという。
▽マクドは告訴を盾に出版社や団体を脅してきた。多くはそれに屈したが、ロンドングリーンピースの2人は本人訴訟で立ち上がった。マクドが同団体にスパイを送り込むなどえげつないことをした。だが、最後はマクドに実質的には勝った。
▽大量生産と一線を画し、ヘビやコヨーテ、アナグマ……などがそのまま住んでいる生態系のなかで、余分な飼料はやらずに牛を育てる取り組みもある。
▽「インアンドアウト・バーガー」は、挽肉も新鮮で材料はその場で切る。メニューも安い。しかも時給8ドル以上を出しているという。
▽コンピューターやソフト、航空などのアメリカの主要産業は、もとはといえばペンタゴンの助成があった。インターネットも元は軍事通信網から広まった。
議会で決まった法案の方が、自由市場で決まる方針よりも大きな役割を担ったそうだ。
■市民版行政改革
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