彼の本は小学生の時からたまに読んでいる。
わかりやすくて、スラスラ読めるのだけど、胸にちょこっちょこっとひっかかる言葉がちりばめてある。小学生にも読めるものを書く文章能力もすごいし、「人生」に対する洞察力もすさまじい。
その著者が晩年になって「女性にしか期待しない」という。男性の何が期待できなくて、女性に何を期待できるのか。そう思って読んだら、「まさにその通り」と思い、ある種の絶望と、ある種の明るさを感じられた。
京都に住み、取材はいっさい断る人だった。一昨年に亡くなる前に1度会っておきたかった。
男は働かされすぎで本も読めず、コンサートも行かない。女との教養の差は歴然と離れる。周囲のサラリーマン(記者を含む)を見ていると確かにそうだと思う。会社でのキャリア・能力を、自分の能力・教養と勘違いしていってしまうのだろう。そうなったらとくに定年後、悲惨だ。
以下抜粋。
【企業の社内教育】 企業が一人前に育てる制度は軍需工場から。明治政府が外国人を呼んできて、工場で教えてもらうところから始まった。徒弟制度というしきたりが受け入れる背景にある。
【教養】 花婿学校で態度や口のきき方を勉強してるけど、かしこい娘さんの教養が、そんな「態度」や「口のきき方」に魅力を感じるとは思えない。教養とは、過去の知者と芸術家にあるものが、自分のどこかにないかという探求の結果で、それを見つけたときの逢い引きのような喜びが教養の楽しさだ。
【労働組合】 産別組合のはずが各企業別になった。イエ意識で「他人は口出しするな」となる。自分の企業がもうかれば月給も上がるという考えだ。(まさに僕の勤める会社の労組のこと。企業内で閉じこもって、待遇改善を求め、他の産業よりも比較的よい給料をもらってエリート意識をはぐくむ。そんなことして、労働者が孤立してたら、これからの厳しい時代、やってけへんのに)
【老後の生き甲斐】 本を読んだり、山に登ったり、絵を描いたりしていた人は、老後になってもヒマを持て余すことはない。70歳になるまでに人生に空白をつくらない方法を身につけておく。
【主婦】 という言葉が最初に出てきたのは明治9年のこと。大部分の妻は、朝から晩まで働きづめだった。上級サラリーマン層が増え、「女中」を雇える時代になり、家事を取り仕切る管理者として主婦が登場した。が、戦後、女中がいなくなって、主婦は再び女中兼妻女に転落。家電製品によって、女も外で働ける時代に。こうして主婦は刻々に変身してるが男は明治以来変身していない。(奥様という言葉も同様の経緯)
【女だけの組合】 組合をつくる力さえない人を組合員にして応援する。イギリスの女の組合は初期に、家で賃仕事をしている主婦を組織し、ストを支えた。組合は、主婦やボランティアにも手伝ってもらい手弁当でやる。男の組合の堕落は、専従という視野の狭い人間ができてから。
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