上下で1000ページという大作だが、あっという間に読んでしまった。
石鎚が舞台だということも身近に感じさせてくれた。
幼いときのトラウマを背負った少年2人と少女2人が、成長した17年ぶりに出会う。過去を忘れるに忘れられず、正面から向き合うこともできず、他人からの評価を得ることと、他人への献身を心がけることに専心して生きてきた。
自分をごまかし、他人に偽り、傷を避けて生き続けてきたのが、3人の再会をきっかけに、否応なく過去の傷と向き合わなければならなくなる。その中で悲劇が起きる。
まさにアディクションやアダルトチルドレンの問題だが、他人に弱みもなにもさらけ出して、自分が自分を評価できるようになること、「生きている」だけで価値があるんだ、と実感できること、などは、今の僕にとってもまだ超え切れていないテーマだ。頭ではわかるが、どこかで他人の評価とか、業績とかに自分の生きる意味を求めてしまう。
命の価値ってそんなもんじゃない。命そのものを愛おしめるようにならなければいけない、と思う。
「生きていてもいいんだ、お前は生きていてもいいんだ、本当に生きていてもいいんだよ」という最後の一句がすべてを象徴している。
そんなことを久しぶりに考えさせてくれた。
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