ホーホケキョとなりの山田くん
(映画)


 

 絵がほんまに凝っている。水彩画ふうの独特の画面かと思えば、デッサン風の情景描写にうつり、ファンタジックな筆使いも織り込む。居間にあるテレビの野球中継の様子まで、リアルに再現している。ちなみに解説者の声は江川だ。
  ミヤコ蝶々や中村玉緒、さらには主題歌をうたっている矢野顕子まで声優として出演する。こだわりにこだわり抜いて作っているのがわかる。絵画や映画が好きな人は存分に楽しめるだろう。
 4コマ漫画の世界を2時間近い長編にしたてあげる発想もおもしろい。全体を貫くストーリーがあるわけではないが、それぞれにフンフンとうなずいて、最後にはなんとなく「適当でいいかげんに生きていこうや」といった結論に収斂していく。
  たとえていえば古今集などの和歌集とか、句集とかいった感じだ。1句1句が独立した作品だけれども、集めることによってひとつの主題を提起するからだ。
 だが、新聞の4コマ漫画ほどのおもしろさは感じられなかった。子供が見るには難しすぎるし、大人が見てもちょっと頭を使わなければ笑えない。観客の僕らが笑う前に登場人物が笑ってしまうシーンもいくつかあった。
 マニアには必見、おもしろさはいまひとつ、といった評価だろうか。


 作った人はおもしろかっただろうね。宮崎駿ブランドと高畑勲監督の人のよさがあるから、笑ってあげなきゃいけないし、メッセージも読みとってあげなきゃいけないし、なんや気いつこうたわ。(レイ談)