2本の木があります。右は太い喬木タイプ、左は灌木タイプ。どっちが茶の木でしょう? どっちも茶の樹です。 左は、日本茶や中国茶に多い葉っぱが小さい種類で、渋みになるカテキンが少なく、うまみになるテアニンが多いから緑茶に向いている。 左はインドやスリランカにある葉が大きいアッサム種で、カテキンがたっぷりあって渋いから紅茶にぴったり。 ここは、日本の紅茶の実質上の発祥の地である枕崎市の「紅茶母樹園」。こうやって比べられるから楽しいね。
これも紅茶用のアッサム種の木。日本の茶では、こんなに大きくならない。 生糸と並ぶ輸出産業の柱に育てようと明治政府が技術者をインドや中国に派遣したのがはじまり。戦後も国家予算をつぎこんで品種改良に取り組み、一時は数千トン輸出していたけど、最終的には71年の輸入自由化でパーになった。 茶業試験場は静岡では日本茶、鹿児島では紅茶を担当していて、数々の紅茶用の品種をつくってきた。品種登録までには約20年かかるもんだから、最新の「ベニフウキ」は93年に登録された。枕崎はいわば国産紅茶のメッカだったのだ。 最近、健康ブームやらなんやらで国産紅茶がちょいと見直されてきてる。日本茶よりも無農薬で作りやすいらしいしね。現在の生産量は全国で20トン程度だそうな。 「紅茶」として飲むと、香りや渋みが足りなくてイマイチなんだけど、砂糖がなくてスイスイ飲める「紅茶風飲料」としてならけっこういける。
枕崎の試験場のすぐ近くにあるこの建物は、かつては紅茶の工場だった。最新式のインドの工場をまねた本格的な工場だったけど、今では農機具置き場になってるんだって。 最近あちこちでつくりはじめた国産紅茶の大半は、緑茶用の「やぶきた」を使ってる。安くしか売れない2番茶の活用法として少しずつ広まってきた。 インドやスリランカでは、安い労働力を使ってやわらかい葉だけ手摘みしてるから、香りではかなうわけがない(日本で手摘みしたら何万円の超高級紅茶になっちまう)。 でも、ウーロン茶と緑茶と紅茶を足して3で割ったような中途半端な渋みと香りとやさしい味をもつ国産茶は、毎日飲んでるうちにクセになる。 一度お試しあれ。