釧路は炉端の故郷A

2001年12月10-11
釧路湿原、釧路川を望む

 店を出ると、厚化粧の女性が声をかけてきた。
 「おにいさん、たべにいくの?」。やり手ババーかと思ったが、実は炉端の店のオーナーという。 「『炉ばた』なんか高いだろ? あれは観光客ばっかりだ。うちだったら3、4000円でたっぷり食べられるから」という。昔は釧路川沿いで大きな店をやっていたという。店の名は「道産馬」。
 翌日、自信満々の言葉に惹かれて行ってみた。ビルの1階の奥。扉をあけると、「来てくれたあ。うっれしいなあ」と喜んでくれる。昭和5年生まれのおじさんが料理の担当だ。
 カウンターとテーブル2つだけの定員15人ほどの店の壁には石田えりらの写真がはってある。「えりちゃんは最初は1人で来て、おいしいって喜んでくれて、スタッフもいっぱいつれて来てくれたんだ」
 まずはミソ味のカキ鍋。厚岸のカキは歯応えがあり、肉汁もじゅわっと出てくる。タラの刺身は歯応えも脂ののりも申し分ない。サケの刺身も昨日のとは違って完全な生ザケだ。
  20センチはある大きな牡蠣を殻ごと焼いてもらって400円。シシャモは卵をもたない雄のうまさに驚かされる。ツブ貝はサービス。「イカのゴロ」はイカの内臓に塩して、ラップでくるんで冷凍したもの。うるかのような複雑な味わい。最後は、ジャガイモをつぶして、それにジャガイモでんぷんを加えてフライパンで焼いた芋団子。砂糖醤油につけて食べた。
 酒2合と生ビールと焼酎の湯わりを飲んで4500円。朝から1食も食べていないのに腹いっぱいになった。生のホッケを自分で開いて半日干したというのも食べてみたかったが、あきらめた。
 仕入れている和商市場の店を紹介してくれる。「ほかの店はダメだ。ここが一番いいから」とのことだった。
 板前おじさんは樺太生まれ。ロシア語ができたから漁船の通訳もしたことがある。200カイリ以前は漁師は札束を腹巻きに入れて飲み歩いていた。出来高制で賃金が払われていた。だが、水揚げの枠をはめられて羽振りは悪くなった。船に同乗するロシア人の監視人には賄賂を送ればなんとでもなったが、監視船に乗り込まれるとどうしようもないという。
 商店街の人は、「昔の荒稼ぎを忘れられないから今でも高いんだ。そういう店はどんどんつぶれていく。ほんとに寂しくなったよ」「安くておいしい魚、というイメージで来た人はみんな驚いてるね」と言っていた。
 釧路の飲み屋が高いのはそんな背景があるんだな。

湿原展望台近くで

釧路川沿いにある商店街の筋。
かつての繁栄がウソのよう。