八重山民宿ミシュランA

2002年8月
民宿「船着き場」

 台風が刻々と近づいている。「きょうか明日の朝の便で那覇に行った方がいい」と言われる。明日の朝一番の便のキャンセル待ちをすることにする。
  午後2時の白保行きのバスに乗る。懐かしい風景をたどって20分ほど。石垣をめぐらせた家が残る白保の集落。牛のフンのにおいがするのは、集落である証拠だ。自然しかなかった西表から来ると、「里」に来たぁと感じる。
 民宿「船着き場」は、昨年オジイたちに泡盛をご馳走になった東屋のすぐ裏手にあった。昨日の「マリウド」同様、ヤモリも歓迎してくれる。
「だんだんハードになってくるわ」とレイザルはひいている。「最初の石垣のペンションはぜんぜんオッケーっだったやろ。2泊目の仲間川はヤモリはこわかったけど、あとはオッケーだったやろ。マリウドはクーラーはコインになって、ヤモリも増えてきたやろ。でもトイレは室内にあってきれいだったやん。きょうはとうとうトイレが外になってしもた(正確には外とつながっているだけ)。夜は怖くて1人じゃいけへんわ。ヤモリが頭の上から落ちてきたらこわいやん」。少々お疲れぎみ。「来年の夏は北海道にしよな」と言っている。
 台風のため船はすべて陸にあげてしまい、シュノーケルはできない。船着き場のそばでチャポチャポ泳ぐ。
 夕食は庭で。グルクンのマリネ風、刺身、自家製のジーマミ豆腐、鰹のアラの味噌汁、パッションとドラゴンとスターフルーツ。「意外や。こんないい食事が出るなんて!」とレイザルはけっこう喜んでいる。
 おばはんは「普通の民宿では煮魚なんか出してくるやろ。あんなの、まずくて食べられたもんじゃない。沖縄が長寿食ってのもマスコミがつくった虚像だよ。ソーメンチャンプルなんて油たっぷり。モズクなんてほとんどの家じゃ食べてないよ。アメリカに占領されて、食べ物がかわって、たまたま伸びただけだ」。毒舌がおもしろい。
 35、6年前に横浜からリサイクル問題にかかわるために来た。空港反対運動も最初からかかわる。今は空港予定地に1坪地主を1000人集めている。オバーの旦那の名義で登録し、それを少しずつわけている。400人分集まった。「なんやかんやいうなら1坪地主になるべきよ」。最後に「あんたが新聞記者と知って、興奮してまくしたててしまったよぉ」と照れていた。
 食事がおわり、おじいたちが集まる海辺の東屋へ。自家発電で裸電球がともっている。
 古酒を1本、「昨年のお礼です」ともっていくと、「ああ、覚えてるよ」とクロンボオジーとグシケンさん。
 「船着き場に泊まってます」というと、「おお、この人が船着き場のオヤジだよ」。となりに座ってるオジーを指さす。
 「いやあ、しらんぷりしようとしてたのに。あまり顔出さないようにしてるんだ」とちぢこまってる。
 奥さんの話を聞いたというと「あいつはなあ、まったく」と愚痴モード。「ここでいつも愚痴るんだよな。ハマッコだから口が悪いもんな」と冷やかされている。
  「酒飲んでるオジーたち? 身持ちが悪い連中ばかりだよ」とおばさんは言ってたけど、自分の旦那もいるというのがおかしい。
 「薩摩から搾り取られた。人頭税もひどかった」という話。「さつまんゆー、やまとんゆー、アメリカユー」という歌……。
 大阪からつい最近移住してきたNさん。娘がこっちに嫁いできたのをきっかけに決断したという。「いろんな悲しい思いをしてきたけど、こっちの人はやさしくて、明るい。人にひかれて来たのよ」とべた褒め。船着き場のオバアと好対称なのがおもしろい。昨年会ったTさんの行方は、「こっちにはいるけど、最近来てないねえ。水虫ができて靴があわなくなってしまった」
 ほんまかいな。
 クロンボオジーが口を開いた。
「子どもできてないんか?。きょうがんばれ。夜明けにやるのが一番いい」・・・
 波の音をさかなに泡盛の八重泉をのむ。南天の蠍座は高く、北極星は低い。天の川が中空を流れる。ムラの灯火がなければもっときれいだろう。
 民宿にもどり、レイザルはコインクーラーにたっぷり100円玉を投入する。
 夜、赤ん坊の鳴き声のような、フギャー、フギュー、ギャアアという悲鳴。猫の喧嘩だ。さらにはけ、け、けっ、というヤモリの語らい。さらにさらに天井裏からはテテテテテテというネズミの足音。レイザルがきらいなもののオンパレードやね。
  明け方、トイレにつきあわされた。案の定天井にはヤモリが3匹4匹。「ひぇええ。落ちひんやろな」と悲鳴をあげる。
 朝になって感想を尋ねると、「食事がええから許せるわ。来年も来ような。船着き場も1泊だけしよ」。昨日部屋に入ったときは「来年は北海道にしよ」と言ってたくせに、食い物だけで気が変わりやがった。

【総決算】2人分
航空運賃 149000
▽24日
コーヒーなど  500
バス      400
宿泊     8000(1泊朝食)
夕食     6060
コンビニとモス 1000

▽25日
南風見ぱぴょん  20500円  
高速船        3060円
宿泊とビール2本 15900円

▽26日
虫さされ・ジュース    1000円
バス            1300円
昼食(「たまご」)     2600円   
(ぱっしょんジュース、ビール、チャーハン定食、そば定食
夕食            4600円  
(いのしし定食、ピザセット、ビールジョッキ2、グラス1、シーカーサージュース)

▽27日

浦内川カヌーツアー      17400円
(保険料、昼食マリンブーツも)  
お茶ペット2本          400円  
レンタカー            5000円  
茶、ケーキ、はがき、ビール  2300円  
夕食(ポケットハウス)     5050円  
宿代              15600円
(2泊、朝食、自転車、足ひれ)  
コインランドリーと冷房    1200円

▽28日

船浮まで船往復      1640円
ビールと缶ジュース     400円
ガソリン          700円
野菜ソーキそばと焼きそば 1500円
船賃(船浦−石垣)    4000円
ホテルでお茶       1100円
日焼けどめとジェル    2000円
コンビニで虫除け      700円
石垣ー白保         700円
民宿「船着場」     10000円

▽29日

タクシー(空港まで)  1400
石垣空港おみやげ   2500
那覇空港で雑誌    1000
ホテルタクシー     1000
古酒屋         10000
本屋           6000
沖縄そば屋       1800
首里往復         800
果物            160
果物おみやげ      2700
市場の夕飯       2300
ブレすれっと       900
手ぬぐい         400
タピオカジュース     300
コンビニ(ビールなど)  500
週刊誌          350
ホテル(カード)   15000