まもなく、急な下り坂になる。 10人ほどの団体や50歳代のおばちゃんグループ、子供連れ……、と書くとドンドン僕らが追い抜いたようだが、事実は逆だ。恐がりのサルは、まず杖で前方30センチの岩を確かめ、ついで右足を軽くのせ、それからこわごわ左足をあげる、といったテンポで歩く。必死なのがわかるだけに、笑いをこらえるのがつらい。 登ってきたルートが北側に見渡せる。谷筋から頂上まで岩場が連なり崖のよう。 「ヒェー、あんなとこ登ったんかいな、私ってえらいなあ」 サルのデイパックのチャックには、ペコチャン人形をつり下げてある。人形が欲しいがために何枚まずいチョコレートを食わされたことか。きょうつけてきたペコチャンは、なかでもお気に入りのオランダ民族衣装版だ。 「ええアイデアやろ。チャックの位置もすぐわかるし、かわいいし。せっかくやから写真とっといてな。オランダペコチャンは一番気に入ってんねん」 まさかこれが見納めとは。 下山して紛失に気づいたときのサルのあわてようといったらなかった。 「うわぁ大変やぁ、遭難やあ。ゴミひとつない山で、キャンディの袋が1つあるだけで、よくないなあと思ってたのに、あのペコチャンもプラスチックだから、分解されずに残るんやろな。罪の意識を感じるわ」 13時すぎ、樹林帯に入る直前で休憩。眼下に見えた薬師岳が、いまは目の前にそびえ立っている。小田越の小屋もずいぶん大きく見えるようになった。日陰だけど風の通らない樹林帯を50分ほどで自動車の道路がある小田越の登山口に到着する。朽ちた鳥居が迎えてくれた。河原坊の駐車場まではあと30分ほどだ。 完
花巻から岳まではバスあり。 第3セクター峰南荘(2食6500円)ほか民宿多数。弁当も作ってくれる。シーズン中は河原坊までバスあり。 新花巻でレンタカーを借りればさらに便利。
【コースタイム】 河原坊-頂上(登り3時間半) 頂上-小田越え(下り2時間)
大迫町のページ http://www1.echna.ne.jp/~ohasama/
花巻市のページ http://www.city.hanamaki.iwate.jp/main/menu.html
長根葡萄園リースリング・リオン」 白ワイン。1950円だけど逸品 (大迫町)