正しいワルガキ
10数メートルという風が吹き荒れているのに、船着き場の波はおだやかだ。コンクリートの防波堤のかわりに岩でぐるりと囲んでいるのが心地よい。
ガキンチョ5人ほどが、魚釣りをして遊んでいる。真っ黒に日焼けして、ガキ大将に連れられて、手にはヤドカリを持って「これえさにして釣るんだ」と得意げだ。学校おわって、そろばん塾いって、家に帰る前に海で遊んで帰るのが日課だ。久しく見なかった正しいワルガキの姿。サンゴセンターのスタッフKさんは「絶滅危惧種の小学生」と表現した。なるほど。
とんぼが蠅のように乱舞している。
穏やかな波の礁湖に、点々と小石のように人影が見える。釣りだろうか。
屋根と床板だけの小屋にはさっきのオジイたちのほか30歳代の女性が1人いた。
「飲むと運転できないから」と最初は遠慮したが、「いいからいいから」と誘われたら、「じゃ、一杯だけ」となった。つまみは釣ったばかりのアイゴ(アイボ)を酢でしめてわさび醤油であえたもの。「前の日にとった魚なんて食べない」というだけあってうまい。
唯一の女性Tさんは、関西から子供2人を連れてやってきた。。白保小学校は1学年28人。関西ではいじめられていたが、ここでは転校した翌日には友達が10人くらい遊びに来た。「学校から帰ってきたときの子どもの顔がちがう。ぜんぜん明るい」と言う。
「子どもができたら絶対白保小に入れたい」とレイザル。気が変わりさえしなければ、らオレも会社やめられるのかな。
毎晩の宴会場になっている小屋も、オジイとオバアが海で泳ぐ子どもたちを見張ったり世話したりするために役立っているという。
クロンボオジーことナカソネさんは今年80歳。そのオジーが「ここは白保のナンパ通り。本土の子をナンパするんだ」。さすがや。オレもここで座ってたらもてるだろうか。
乱舞するトンボを指さして、オジイたちは「カジフチドゥイ」と言った。「風ふく鳥」という意味だ。台風の前か後、気候が急激に変わるときに大発生するという。
午後7時、おいとまして那覇に向かう。夕食は「島の美食や ゆんた」でとった。
【メニュー】 にがなの白あえ、ジューシーのおにぎり、さしみ5点盛り(ミイバイ:ハタ、タカセガイ、ホタテ、マグロ、イカ、タコ)、島海老のカキアゲ、スペアリブの煮込み、ソーメンチャンプル、生ビール2杯。5300円(2人分)
【つづく】