忘れられる旧正月
ビールに豆腐庸、ゴーヤのあえもの、サツマイモの澱粉とネギやニラをお好み焼きのように焼いたウムクジブトル、ウジラトーフ(豆腐のコロッケ)、豚の塩漬け、スクガラス、泡盛2合……。
「最近は沖縄の方言も、習慣も薄れてきて寂しいよ」とおばちゃんは言う。新正月よりも旧正月を盛大に祝ってきたが、最近は仕事納めや仕事はじめなどは本土のやり方に従うようになり、旧正月は廃れつつあるという。
友達同士のコンパでは1時間くらい遅れるのは当たり前という「ターギャー」(たいがい)精神や「ウチナー時間」も、だんだん薄れ、本土並みに時間を守るようになってきたという。ひとことでいえばラテン的風土が日本的になってきた、ということだ。つまらないなあ。
逆に、泡盛は最近また若者に人気が出ている。以前はスナックではウィスキーが定番だったが、最近は泡盛が多いという。
吟醸酒のように甘い種類や、ワインかブランデーのような味のもの、アルコール度数も低いのが増えたのが原因だとおばさんは話す。
いろいろ試飲させてもらった。僕は昔ながらの40度くらいの泡盛の方がコクがあっておいしいと思う。
午前零時を過ぎ、「遅くなってごめんね」と席を立とうとすると、
「沖縄では12時が夜の始まりよ」。アイちゃんも翌日の正午まで飲んでいたことがあるそうだ。
大阪で看護婦をしていたことがあるが、いまは美容師になりたくてもう1度勉強中だ。
おばちゃんの夢は焼き物と農業をやってのんびり暮らすこと。そのために今は働いて金をためているという。
結局4時間飲み続け、午前1時すぎに店を出る。お勘定はたったの3000円だった。