久美浜カニ旅行団B

1999年11月

火のハーレム号

 「きょうどうしようか」と話し合い、鳴砂で有名な琴引浜と天橋立に行くことにする。
 久美浜から網野へは、海沿いの断崖を縫う細い道を選ぶ。漁村の家々は黒瓦ばかり。藍色の海と晩秋らしい深い空とのコントラストがいい。斜面には海の方を向いて30基ほどの墓が並んでいる。長崎の外人墓地のようだ。
 網野町の琴引浜には、サーファーが何十人も浮かび、たまにボードに立ち上がろうとしてはこける。滑稽味があって見ていてあきない。
 海はラムネ瓶の色に透き通り、海底を砂が踊っている。 靴と靴下を脱いで、ズボンをたくしあげ、水に入った。ひんやりしている。普通の砂浜では、波が寄せてひくときに足元の砂が削られて流されるが、ここではほとんど流れない。砂粒が大きいからだ。大きい粒だから、掌にのせて握るとキュッと鳴る。波のない深夜、1人で裸足で歩いたら、きっと浜が鳴くように聞こえるのだろう。
 長いスカートの下にタイツをはいているダーちゃんが、海に入れずに悔しそうにしている。
「あー、むっちゃ後悔。カニだと思ってウエストないのをはいてきて、ゆうべはしてやったり、と思ったのにー。むっちゃ悔しいわぁ」
 天橋立までは車で40分ほど。北側の傘松公園にリフトでのぼり「股のぞき」。股から顔を出して、逆さにして橋立を見ると、橋立が天にむかってかかるように見えるという趣向だ。冬の弱々しい太陽に阿蘇海がきらめき、遊覧船の航跡がスルスルっと天にのぼっていくように錯覚する……。種馬キュンがそんな説明をすると、レイザルは台にのぼり「あかん、見えへん。体が堅いし、しんどいわ」とブツブツ言い出した。長スカートのダーちゃんは 「ああ、むっちゃ後悔やぁ。なんで私だけ見えへんねん。むっちゃ悔しい」。
「『ムッチャ』を150回くらい言ってるんちゃう?。これじゃ強調になってへんなあ」と種馬キュン。
 車に乗り込み橋立の反対側にまわる。
「お兄さんたち、安いよ。ぐるっと全部まわるからさぁ」。赤いつなぎ服を着たおっさんが寄ってきた。遊覧船の客引きだ。港には「スペースシャトル」やら「ナイトガンダム」やらとド派手に塗りたくった流線型のボートが数隻浮かんでいる。胴体には「NASA」。
  おっさんの1人が乗り込み、ブロブロブロロロと爆音をたて、飛沫をあげて1隻が出航する。
「うわぁ。仮面ライダーのおやっさんみたいや。かっこええなあ。でもあのつなぎ、YAMAHAって書いてあんで」(レイザル)
 船には乗らず、橋立の松並木を歩く。大きな松の木の下に、木造平屋建てのお茶屋がある。甘いミソを付けて焼いた団子はやわらかくて香ばしい。竹筒にまいて炭火であぶった竹輪もおいしい。ラブラブカップルは案の定、あまーいぜんざいをすすっている。
 帰途、中国自動車道で渋滞に巻き込まれた。でも、種馬キュンの車はすぐわかる。ナンバーが「ひ806」、「火のハーレム号」である。ちなみにボクの車は「5569」。 「ゴーゴー…」と語呂合わせしようとしたら、
「あかん! 人前でそれ以上言ったらあかんで」(レイザル)
「え、なんでや? ゴーゴーロック、のどこが悪いんや、ロックは不良のやる音楽だからか?」
いったい何を想像してるのやら。
 4時間ほどで西宮に無事到着した。おしゃべりダーちゃんとオカミさんと車中で会話のバトルを繰り広げたタッキーは、すっかりしゃがれ声になっていた。
  タッキーお疲れさま。

 

 

天橋立はスカートはやめた方がええで

 

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