三浦半島A まぐろ編

2000年2月3

まぐろと鳩の町

 会議が終わり、朦朧とした頭で、目の前に来たバスに行き先もわからず飛び乗った。
 大根畑のなかを南へ南へ下り、三崎東岡という停留所に着いた。どうやら三崎港が近いようだ。
  太陽の方向に10分ほど歩くと港に出る。港町だけあって飲み屋や寿司屋が多い。そこかしこに「マグロ丼」といった看板がある。「とろまん」「あんと浪漫」という意味不明だけどそそられる看板も目立つ。前者はまぐろと野菜を入れた中華饅頭、後者はまぐろ入りのごま風味のアンが入っているらしい。ここまできて初めて、三崎がマグロ遠洋漁業の基地だと気づいた。
 漁港で船を見物したあと、商店街に足を向けた。
 平日のせいか閉まっている店は多いが、石畳風の舗装は風情がある。しっくい壁の蔵が点在し、雑貨店などの地元の人向けの商店になっている。
 マグロを食べようと「紀の代」という店に入る。
 ビンナガマグロを使った「びんとろすし」(8個で1900円)を注文する。身はオレンジっぽいピンク色。脂がのってうまい。この値段でこれだけのトロは他では食えまい。
 この店を含めて13店で「みさきまぐろ倶楽部」というグループを作っているという。アンテナショップもあり、「とろまん」も、このグループが創作したようだ。看板にしろショップにしろ、センスはなかなか。
「世界になだたるグルメの港町に」と結集したという。

  三崎港のバス停から見えた海南神社に寄る。
 石段を駆け上がると数十羽の鳩がファタファタファタと目の前を舞い上がった。
 足をとめると、地面に降り立つ。御手洗の水をついばむように飲むヤツもいる。50センチの距離まで近づいても逃げない。そこかしこ鳩だらけ。社殿の屋根にもズラリ並び、見下ろしている。鳩が祭神のように思えてくる。
 ずっとずっと上空には、ピーヒョロロロロと声をあげてトンビが大きな弧を描いている。
 大国さんのような姿の「食の神」が、巨大なマグロを手にした縦横4メートルほどの肖像も異様な存在感がある。建物が素晴らしいわけでもなんでもないのに、不思議な雰囲気の神社だった。

 

 

この神社の主の鳩軍団