ラーメンとアイスとタバコ屋の尾道 A

1998年12月 99年4月

コンビニ目立たぬ町


 坂をずんずんのぼる。路地のあちこちに猫が寝そべり、便所のにおいのかわりに花と古い木の香が鼻をくすぐる。京都でもめったに出会わないにおいだ。
 千光寺公園へ。桜の花ごしに坂の町と狭い海と橋とロープウェーと。鳥がチクチクパッとさえずっている。ついこのあいだあれほど寒かったのに、もう春だ。山に囲まれているから選挙カーの音がよく響く。
 観光客が思いを記したタイルが並ぶ路地「タイル小路」、防火用水、共同井戸…。生活のまんなかに見所がある不思議な街である。

 商店街周辺もなぜか落ち着く。
 コンビニがなく、かわりに、おばちゃんが小さな窓から顔を出すタバコ屋が多いのだ。
 京都の八坂神社前の角にコンビニができたとき、ソワソワするような薄っぺらな雰囲気に「京都には似合わない」と憤慨したものだ。でもよく考えれば、この十数年でマンションや駐車場が建ち並び、「古都の風景」なんて消えたのだから、薄っぺらさが「京都らしい」といえるかもしれない。「西日本の原宿」とかいって売り出した方が若い観光客が集まるだろうし……。
 尾道にはそんな道は歩んでほしくないけれど、土建業者がもうけそうな駅前開発ビルを見ていると、かなり危ないな、と思う。
 港近くの「手作りアイスクリーム」の店「からさわ」でモナカアイスを買った。サラサラした舌触りにで甘すぎず、酒飲みの僕ももう1個食べたくなった。しょうゆ味の豚骨の尾道ラーメンも、コッテリしているようで結構あっさりしていておすすめ。

 帰途、福山からバスで40分(510円)ほどの鞆の浦に寄る。サヨリの干物を売る屋台が点在する静かな漁村だ。渡船で仙酔島に渡る。漁師の小さな舟が入り江に浮かび、夕日に染まっている。
 海面が万華鏡のようにきらめいて、眠くなってきた。

路地裏を小学生が駆け抜けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尾道市のページ
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