黒豆ソフト
小学校でのんびりしたあと、町に出る。
「大正ロマン館」は、大正時代(1923)に建てられた当時のモダン建築だ。が、なかは土産物屋。都会にこびたリゾート施設を建てず、古い建築物を有効利用するところには見識を感じるが、もうちょっと、「大正」を生かした使い道はないかなぁ。
篠山歴史美術館本館は、1891年に裁判所として建てられ、1981年まで使われていた。木造の法廷はなかなか味がある。が、展示の内容は中途半端だ。
「先祖代々の宝のうち、価値あるものは売っぱらって、古いけど、余ったものを寄付しましたって感じやな」とはツレの感想。
商店街を歩くと、名産の「黒豆」の看板があちこちに並ぶ。誘惑に耐えかねて黒豆ソフトとシシコロッケ(イノシシ肉)を食べた。
アイスクリームはさっぱりしていて、コロッケもおいしい。商店街は、ケバケバしい建物はなくて、落ち着いたただずまいを残しながら、うらぶれた感じもない。漬け物やら干し椎茸やら饅頭やら、田舎の観光地の「定番」は目立たない。そのかわり、どこを歩いても「黒豆」だ。その場でファーストフード風に食べられるようにしているのも、イマ風の雰囲気作りに役立っているのだろう。若い女の子の2人連れが多いのもそのせいだろうか。
城の西側には十数戸の武家屋敷が並ぶ一帯がある。天保元年(1830)の大火災後に建てられたという。車はめったに通らず、生け垣や木々の緑が雑音を吸収してしまう。森閑としているが、いまも人が住んでいるためか、あたたかみも感じられる。
小学校も商店街も武家屋敷周辺も、人々の生活のなかに今も組み込まれている。その逆はロマン館であり、歴史美術館である。篠山の魅力は、生活と風物の共存にあるのかな、と思う。その意味では尾道と似ているのかもしれない。
子供が緑色の水をたたえる堀で釣りをしている。カエルがアメンボを追って、水面を滑っていった。
完