アルコール30度の秘密
しばらくストレートでチビチビ味わっていると、
「ちょっと水を入れるね」(マスター)
ウィスキーの量の半分くらいの水をチョポンと加える。アメリカではこれを「スプラッシュ」というそうだ。
すると、最初の豊かな香りが戻ってきてさらにマイルドになり、甘いにおいも加わる。味も深い甘味が出てくる。ストレートのときと同じウィスキーとは思えない。
「(アルコール分が)30度くらいが一番味と香りを楽しめるんだよ」とマスター。
40度のウィスキーならアルコールを10度分薄め、60度の酒なら半分に薄める。アルコールによって味覚や嗅覚を麻痺させないためには30度がちょうど良いのだという。ただ、カルキ臭い水道水ではダメらしい。
1杯飲み終わっても、そのグラスをすぐには下げない。10分ほど経って、
「さあ、さっき飲んだこのグラスをにおいを味わって」
さっきはなかった、馥郁とした甘いにおいが鼻腔をくすぐった。
たった80tほどのウィスキーで、こんなに楽しめるとは……。
今まで、本当においしいウィスキーを知らなかったんだあ。こういう飲み方を知ってしまうと、水割りなんか口にする気もなくなるなあ。