ズンダだんご
国道340号をさらに北東へ、小烏瀬川に沿って進んで右の脇道に折れる。道ばたは、コスモス、マリーゴールド、菊、ダリア、サルビア、向日葵…。蝶が蜜を求めて花から花へ飛び交っている。登り坂を15分ほどで水車小屋に着く。田んぼの真ん中、古い小屋だ。いまも使っているのだろう。水田と花と水車と雲と青空。それだけで懐かしく眠い。
雲へにこにこヒマワリあるく
300メートルほど戻ると、「デンデラ野」という看板がある。滑稽でいて悲しげな響きにつられて、斜面を100メートルほどのぼる。周囲の田畑を見渡すちょっとした高台の畑に、碑が立っている。
60歳をこえた老人はここに捨てられ、体が朽ちるまでの日々の糧を得るために、里に降りて食物を手に入れたという。「里におりて働く」というのが、単なる姥捨て伝説以上に現実感があり、胸がつまる。
遠野ユースホステル前を通って西の山際の田舎道を走る。「飢饉の碑」は、角が丸まり、字も判別しにくくなっている、それだけに悲惨を思い起こさせてくれる。
炎天下ペダルをこいでいると、道ばたの花々が一番の慰めだ。同じ花なのに、関西の花がゴミに思えるほど美しい。
「プラスチックのプランターを使わなず、土に直接植えるからきれいなんや。駅前もそうや」
なるほどレイザルの観察は鋭い。農家の物干しでも、竿はプラスチックだけど、竿立ては木だ。風景はこんな小さな積み重ねなのだと気づかされる。
「プランター撲滅運動しよか」。レイザルが調子に乗り始める。
国道沿いの「道の駅 風の丘」は、普通のドライブインだけど、地ビールを飲める。
隣町の「みやもりビール」を味わう。97年から作っているバイツェンタイプだ。炎天下自転車をこいだからか、昨夜のZUMONA以上においしく思える。
パスタを食べたのに、レイザルは団子を3本買ってきた。醤油と海苔巻き、枝豆をすりつぶした甘いアン(ズンダ)の3種類だ。一口食べた途端、騒ぎ出した。
「こんなおいしいのはじめてや。普通のはクチャクチャしてるけど、これはモチモチしてやわらかい。全然違うやん。おなかいっぱいや」
これで終わりかと思ったらソフトクリームも買ってきた。 「多田克彦牛乳使用 多田自然農場」という張り紙がある。
「普通のと全然ちがう。脱脂粉乳にも似た濃ゆい味や。牛乳のもともとの甘さみたいや。森永とかのは粉を水でといたかんじやけど、こっちは牛乳って感じや。もうちょっと甘さを控えてもいいかな…」
ハイハイ。それにしてもよく食う。 完