生命混沌 屋久島の山C

1997年8月

中間

 枝から地面に向かい、無数の気根をたらすガジュマルの木陰に縁台を出し、おじいさんたちが居眠りしたり、世間話をしたり。午後2時すぎ、降り注ぐ日差しは、村を沈黙で覆っている。ウミガメが産卵するという浜からの波のざわめきと、セミしぐれのあいまに、ボソリボソリと老人の声が聞こえるだけだ。
 手首から先が曲がっている昭和24年生まれのおじさんが巨大なガジュマルに案内してくれた。大阪にも住んだことがあるという。すてきな笑顔だが、時折、意味不明のことを口走る。大阪を拠点に、飯場を転々としていたという。浜辺の集落を太陽にうながされるようにフラリフラリ歩いている。ガジュマルが、時の流れを停めている。

尾之間温泉

 ログハウス風の公衆浴場だ。湯船には丸石が敷き詰められ、だれもいない浴槽に身を沈めると、45度という熱い湯がザザーッとあふれた。
 水をかぶっては湯に入り、また水をかぶる。最初は痛みさえ感じた熱さが次第に快感になってくる。
 受付のおばちゃんは、「物騒な世の中ねえ」などと独り言をいいながら、女子大生誘拐のニュースにかじりついている。
 この建物は3年前、尾之間の部落の人たちが建てた。かつてはコンクリートだったが、温泉の湿気で15年しかもたず、「やっぱり木の方がいい」となったという。
 地元の材を使い、地元の人が土台から作った。ナタなどを使って木の皮をむくのは女性たちの仕事だった。
 「よその人は熱いというけど、うちらは赤ん坊のときから慣れている。息子なんてへその緒がついたまま生後1週間目から、じょじょに風呂に入れたよ」。肩が凝ると一番風呂に入ればすぐ治るという。

 

 

 

宮之浦の民宿「川上」
1泊素泊まり4000円、2食つき6000円。
おかみさんが気さくな人。

 

屋久島エコツアーガイド
http://www.nttl-net.ne.jp/yakushima/

屋久島野外活動総合センター
http://www.ynac.com/

屋久島のとびうお漁師はトレーラー暮らし
http://www.interq.or.jp/bass/hiro5228/

島に移住した人のユニークな記録

Natural Places in Japan
http://www.asahi-net.or.jp/~ud6m-kizm/
N_P_I_J/Yakushima_97/Yakushima_97_jps.html

日本各地の自然の写真や訪問記