きょうも長丁場だ。
7時半ごろロビーにおりると、「バスは8時半だから朝ごはんを食べておいで」と宿のお姉さんが言う。
近所をぶらぶら歩いて、色白のきりっとしたおねえさんがやってる店に入る。透明のスープ、上にはほぐした魚の見を散らしてある。これはおいしそうだ。これはフォーではなくてワンタンだという。おねえさんは28歳、18歳の妹は色が濃くて南国系の顔つきだ。
「僕は何歳だと思う?」と尋ねると、「37歳」という答えが返ってきた。きのうまでは27歳とか言われてたのになあ。
宿にもどってベトナム風のアイスコーヒーを注文する。たっぷりシロップとミルクの入った「ホワイトコーヒー」に氷をたっぷり入れる。宿のおねえさんはこれを小さなスプーンでちびちびすくって飲んでいる。飲み物と思ってがぶのみをすると甘すぎるが、デザートだと思えばおいしい。だから冷たい茶がついてくるんだな。
お姉さんは「コーヒーはバンメトートのものが一番だけど、フレーバーの加え方が各会社の秘密で、ニャツッァンの業者のものがおいしいよ」という。
午前9時に大型バスが迎えに来た。
軍港で有名だったカムラン湾のわきを通る。水田の一部を改良したような魚の養殖池が次々にあらわれる。時おり小さな水車が水面を攪拌しているから養殖池とわかった。ナマズだろうか。「カムラン・フーズ」という巨大な工場があった。水産品の加工工場だろう。
10時40分、ファンラン郊外で早くも休憩。グレープジュースやワインをずらりと並べている。氷を入れたブドウジュースはなかなかの味。ワインも甘口ではあるが、ぶどう、という味がして悪くない。1瓶2万ドン。1杯2000ドンで試飲した。
すもものような青い果物はタオという。桃という意味だろうか。3つだけ買って食べたら、外見とはちがって甘くておいしい。甘みを薄くした西洋梨のよう。歯触りは梨だが、中心に大きな種があるから桃かスモモの一種だろう。
1時間後、バスはようやく出発する。これじゃあローカルバスのほうが早いじゃないか。
ぶどう棚が水田と交互にあらわれる。ぶどうの産地だという。
まっすぐにホーチミンに向かわずに、国道を左に折れていく。リゾート地のムイネを経由するのだ。だだっぴろい乾燥した丘を突っ切る。川むこうには白い砂丘がある。一気に標高をおとすと海にぶちあたり、ムイネに到着した。
椰子が茂り、ビーチ添いにカフェやリゾートホテルが点在する。ニャツァンのような喧騒はなく、静かにリゾート気分を味わうのに最適だ。ここでまた休憩。
40分後の午後2時出発というが、いっこうに発車する気配がない。運転手がカフェで一服している。出発かな、と思ったら今度はクーラーの故障。5つか6つのホテルで客をのせて満員になる。エアコンがないから暑いのなんのって。
「ファンティエットの工場で修理します」と言って車の修理工場に横付けして30分ほど頭をひねったがけっきょく修理できなかった。予定より2時間遅れて19時半ごろホーチミンの安宿街ファングラオ通に到着した。
ガイドブックにのっていたホテルの隣のホテルを選ぶ。10ドルを9ドルにまけさせた。7階まで階段をあがるのは大変だが、部屋はきれいでエアコンもついている。
周辺には外国人好みのカフェがたくさんある。朝鮮、イタリア、インド、タイ料理などよりどりみどり。GoGOカフェやらなんやらも。さすがサイゴンだ。
貝やカニがおいてある屋台に入った。ツブ貝のような貝はなかなか。カニは淡泊だけどおいしい。27、8歳の日本人旅行者に声をかけられた。今回は1カ月の旅行という。「モラトリアムですよ」といい、ひたすら語りつづける。
店の経営者の家が向かいの2階にある。その奥の薄暗いトイレを借りたら、ブラジャーが5、6枚ぶらさがっている。シュールな光景だった。
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