ほとんど車が通らない細い道を右に左にうねると、茅葺きの家がちらほら。30分ほどで高知との県境の地芳峠に着く。さびれているけど、8年前と同じ峠の軽食堂が1軒残っている。
西(右)に行けば大野ケ原、左に向かうと五段高原から天狗高原にいたる。きょうは五段高原方面へ。
尾根上に登り切ると広々とした牧草地だ。緑の牧草のなかからカーレンと呼ばれる石灰岩がごつごつと突き出ている。独特のカルスト地形だ。
五段高原に近づき、柳谷村の宿泊施設がある姫鶴平に近づいて驚いた。目の前に高さ10メートルはある白ペンキ塗りの巨大な風車が2機そびえている。高知県側の檮原町が建てたという。
例えるならば、京都駅前に建つ京都タワーだ。
おのぼり観光客は喜ぶ。が、周囲の風景とマッチせず、景観はぶちこわしている。自然公園では木石の採取や、草1本手折ることさえ禁じられているのに、行政による巨大な破壊はこうして許されてしまう。
何十年も前に、国営草地改良事業があったとき、高山の花が咲き誇っていた笹原は牧草地になってしまったから、今更多少景観がかわっても同じこと、という意見はあるのだが。
牧草地の周囲にアザミが咲く。これは「荒れ」の象徴だ。
麓の農家が牛をつれてきて夏の間だけ放牧している。自然のなかで牛と戯れる光景はのどかだが、実は自然への負荷は大きい。
深い縦穴の洞窟が大野ヶ原周辺には多いが、その下には牛の糞がたまっている。洞窟にしか住まない貴重な生物の生存を脅かしている。
【つづく】