九重の厳冬温泉記@

2003年1月27日

 

 九州の久住山に、ふもとから2時間ほど歩かないとたどりつけない温泉宿があると聞いた。シーズン中は毎日数百人の入浴客や泊まり客でにぎわうが、冬は雪に閉ざされ、めったに人は来ないという。これだ!。ぜったい冬に行かなければ。
 大寒波が襲来し、この冬一番の積雪を記録した1月末、慣れないアイゼンをはいて「法華院温泉山荘」を訪ねることにした。
 まずはふもとにたどりつくまで。

 


ヤマメのせごし

 

九重自然観

 松山を11時に出て、八幡浜発午後1時のフェリーに乗り込むと午後3時半に別府に着いた。
 天気は下り坂のため別府でチェーンを購入した。十数年ぶりにチェーンを手にした。
 別府の町の背景は中腹まで草原が覆う鶴見岳だ。この山にむかって一直線にのぼっていく道は、町中から山へととけこみ、北海道の並木道のようにゆったりしている。湯気があちこち立ち上り、「海地獄」「○○地獄」……という看板が見られる。
 別府インターから高速道に。あっという間に標高750メートル。愛媛の三坂峠と同じ高さまで、まっすぐな高速道路でのぼってしまう。山の規模の違いを感じる。
 九重ICでおり、川沿いの細い道をずんずんとのぼっていくと、温泉が次々にあらわれる。
 登り詰めた飯田高原は、びゅーびゅーと風が吹くだだっぴろい草原だ。やまなみハイウェーが縦断し、丘の上にはリゾートホテル。「露店風呂あります」の看板があちこちに立つ。
 目指す「九重自然観」はなかなか見つからない。いったん長者原近くまで走って、またもどって、適当な道をはいったらやっと看板が目に留まった。
 土が露出した駐車場には軽トラックが1台。茫漠とした荒野に古びた建物がさびしくたっている。「まさか、ここに泊まるの?」とレイザルはびびってる。
 車から荷物をおろし、玄関に近づくと、「あ、けっこうええやん」。清潔であたたかい暖炉のある部屋を見ると「ええとこや。さすが私が見つけただけのことはあるな」
 きょうの客は僕らだけ。清潔な部屋が5部屋ある。「和室でも洋室でもお好きな方をどうぞ」と言われ、今日は洋室を選んだ。
 風呂は別棟に家族風呂が2つ。カップルで来たらいっしょに入れるよ。石の浴槽。建物の木の香りがして気持ちいい。かすかに硫黄のにおいがするが、湯をわかしているから鉱泉だ。
 外は強い風がゴーゴーと音をたてている。湯はぬるめで心地好い。ゆっくり読書できた。
 夕食は、山栗のかちぐりの甘煮、里芋のふきのとう白みそマヨネーズあえ(フキはゆでてさらす)、おからをマヨネーズと酢であえたサラダ、豊後牛の焼き肉、ヤマメのせごし、マス塩焼き、かぼちゃグラタン、てんぷら(はこべ、なのはな、冬いちごの葉、干し柿、銀杏、セイタカワダチソウ、クレソン、ヨモギ)、山芋と卵の茶わんむし。玄米と雑穀のごはん。
 どれもおいしい。せごしは、魚を厚さ3ミリほどの輪切りにして水でさらしたもので、鯉のあらいに似ている。
 もともとは高原野菜と米をつくる農家だったが、10年ほど前から宿をはじめた。旦那が昔から構想を考えつづけ、湿地に池を掘り、家を建て・・・としてきた。まだ未完成だそうだ。
 「自然食」は、玄米食を知ったのをきっかけに始めた。「酵素玄米だからか、真っ黒になってしまった肌もなおったのよ」と奥さんは言う。もちろん料理は化学調味料は一切使わない。すべて手作りだ。 【つづく】

ご主人が掘ったという自然観の池


この日の旅行費(2人分)  

  四国の高速  1050     
コンビニ   1100  
フェリー   6900  
チェーン購入 7000   
九州の高速   900   
宿代  18500
(ビールと酒各1本1500円を含む)
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計   35450円

■九重自然観■
(九重町飯田高原、09737-9-3089)