最近運転に慣れてきたこともあって、ハンドルを握ると途端に凶暴になるレイザル殿。高速に入って、ちょいと遅い車がいると、口がクルクルまわり始める。
「なにとろとろしてんねん」「いてまえ」「どうしたんや、遅いで」「なんだなんだなんだ」「ほらみ、こいつがおそかったんや」
「あんた、日ごろの自分のへなちょこ運転を忘れてるんちゃうんか」と言うと、ふと我に返って、
「だから自動車はあかんねん。自分を忘れてしまうからな」。車のせいにすんなっちゅうの。
13:55、徳島IC。14:25、南淡SA。17:45、多賀SA。ここで「大垣から一宮まで20キロ渋滞」のニュースが入った。小牧まで2時間以上かかる。これじゃ中津川には行き着けない。「関ケ原から一般道を走ったほうがいいかも」といわれ、関ヶ原から岐阜へ向かう。岐阜市街に着いたころには日はとっぷりと暮れた。僕はもっと先でキャンプをしたかったが、「もう暗いし、ホテル泊まろうぜ」とレイザルはすっかり気弱になっている。
1人5000円のビジネスホテルにチェックインした。
暗くて沈んだ岐阜の街。高層建築がほとんどない。「繊維商店街」なんか、夜のせいかシャッターばかり。ホテルで教えてもらった柳ケ瀬本通りにある居酒屋「菊川」へ。女の子もおっさんも若いサラリーマンもいる大衆酒場。メニューはどれも安い。生ビール1杯ずつと生酒1瓶。いろいろ料理を頼んで2人で4700円。味は普通だが値段がよかった。
演歌にもでてくる柳ケ瀬。フィリピン、ラテン、韓国の女の子が道ばたにたむろしている。 1人だったらスペイン語の練習がてら、絶対声をかけるんだけどな。
居酒屋側の商店街は10時に電気を消したのに、道の向こうのアーケードは色とりどりのネオンがまたたいている。その華やかさにつられて足を踏み入れると風俗街だった。キャバクラとかヘルスとか、ストリップとか、もろもろ。これでもかこれでもかと並ぶ。
「お二人でどう?」「(怖がってオレの手を握っているレイザルをひやかして)その手はかたいきずな?」。アーケードを徘徊する呼び込み込みおじさんや、ワンレンの南方系の顔の女の子たちがうろうろ。化粧か香水の甘い匂いがして、中南米かタイの歓楽街を思い出す。立ち止まりたいけど、ガマン。淡々と通り過ぎた。
岐阜ってけっこう魅力的な街やね。もう一度来よう。 【つづく】