木曽路宿場巡りA

2003年8月13日
馬籠と妻籠

 天気はしだいに曇りがちに。冷夏で稲の穂がやせている。8時半に岐阜をでて、旧中山道の宿場町が残る国道21号を木曽路へ。
 レイザル運転はきょうも気合いが入っている。山道で左に揺れ、右に揺れ。ガランゴロン。後部座席では荷物があっち転がりこっち転がり、座席の下にドカドカドンドンと落ちる。
 狭い道で、対向車にミラーをコツンとぶつけられると、キッ! と後ろをにらみつける。「あれぜったいあっちが悪いよな」。しばらくして「もう一度繰り返すようだけど、ぜったいあっちが悪いよな」。またしばらくして、「しつこいみたいやけど(しつこいって)絶対あっちが悪いよな」。
 「♪ブチブチブッチブチ、レイザルが怒ったあああ♪」とうたうと(直接言うと怒るから)ちょっと反省したらしく、「たしかに、いつまでブチブチ言うのはあかんんあ。人のふりみて我が振り直せやな」と納得してくれた。ホッ。
 10時45分に馬籠に着く。石段の周囲に江戸時代の雰囲気を再現した宿場町だ。10年ぶりに来たが、以前よりずいぶんにぎやかになっている。
  ソバ屋、ごへい餅、木工品、漆器……。ソバ屋はやけに高い。観光客の財布のひもをゆるませる雰囲気が充満している。
 次の宿場の妻籠までは約7キロ、馬籠峠までなら3キロほど。途中まで、石畳の山道を歩いたが、15分ほどでサンダルを履いてきたレイザルが音を上げた。
 車で妻籠に向かう。峠の反対側にある妻籠宿は、馬籠ほど観光化が進んでいない。ちょっと寂しげな落ちつきがあって、好感がもてる。
 道路の両側には、土産物屋や民芸屋などが並ぶ。蔓の籠を売る店もあるが、あまり観光客は立ち寄らない。「ほとんど中国で作ってるって知ってるもんな。そもそも、『こっちでつくってるやつですか』なんて悪くてきけへんやん」。
 木曽のひのきを使ったタライの店には観光客が群れている。1個4000円から1万円以上のものも。ウドンやそうめんにぴったりだが、なにぶん高い。
 馬籠も妻籠も、宿場町のなかに民宿が多い。水戸黄門に出てくるように、2階に編み笠がかけてある店もあって、ついつい入ってみたくなる。
 民芸品店の店先に「赤旗」と書いてある木製ポストがあった。1部90円で売っている。店主が共産党町議だという。こういう田舎で共産党の痕跡を見ると、ホッとする。支持するしないにかかわらず、外国人が多かったり、共産党が力をもっていたりするところは、よそ者が入りやすい町であることが多いのだ。
 15時10分に車に乗り込み、木曽川のほとりを走り、木曽福島から高山方面へと折れる。峠をずいずいのぼって、ぽっかりと開けたところが開田高原だ。17時に「民宿いずみ」にチェックインした。
 公営の温泉施設やまゆり荘へ。600円。ちょいと高いが、鉄錆のにおいのする茶色がかった湯は有馬温泉のようだった。
 夕食は、手打ちソバ、ほたてぐらたん、ばさし、しめさば、いわな塩焼き、ポテトサラダ、瓜の煮つけ、天ぷら、すきやき、茶わん蒸し、スイカ。腹ぱんぱん。 【つづく】

一服したソバ屋。高かった
一服した馬籠のソバ屋。高かった

 


妻籠は馬籠より生活のにおいがある

 

 


「赤旗」ポストがあった民芸店