愛媛遍路・冬52〜53

2004年1月12

キリシタン灯籠

  林間の車道をのぼると、鳥がやかましいほどにさえずって、竹や杉の葉をわっさわっさと揺らす。「ミカン100円」「伊予柑200円」といった良心市も。
 12時半、本堂にたどりついた。入母屋造りの瓦葺きの屋根は重厚な存在感がある。鎌倉時代に建造された国宝だという。下界から隔絶され、線香のかおりがただよう静かな世界。学生らしき若い男遍路2人が本堂に入ってきて、納札を箱に入れ、般若心経を開いて、浪々と読経するおじいさんの後ろに立ち、恥ずかしそうにもごもごと口を動かしている。白装束の本格的なかっこうだが、服も頭陀袋もまだ真っ白でチャックの金属がきらきら輝いていて、小学1年生のランドセルのよう。俺は読経する気になれないし、白衣を着る気にもなれないけど。
 1時前に太山寺発。和気公民館の前を通ると、晴れ着の女の子達がつどっている。よくみるとスーツ姿のあんちゃんも。きょうは成人式なのだ。それにしても、女の子は華やかでかわいいのに、男はガヤガヤとやかましいだけでネズミかごきぶりのよう。
 1時半、車がようやくすれ違える住宅街の道に入ると、53番円明寺が見えた。何度も車で通ってるのに、入ったことはなかった。寺の手前の大きな灯籠もあまり意識しなかった。歩いてくると、そういったひとつひとつがありがたく感じられる。
 境内の左手奥には「キリシタン灯籠」がある。「合掌するマリア観音とおぼしき像が彫られている」といい、よくよく見るとそう見えなくもない。この近辺は、四国で一番最初にキリスト教が伝わった場所とも言われており、それとの関連があるのかもしれない。
  境内にど真ん中に山門が鎮座しているのもおもしろい。納経所のおばさんに「不思議ですねえ」と言うと「そうなんですよ。不思議なんですよ」といい、寺のいわれを書いたパンフレットをくれた。
  日本最古という、慶安3年(1650年)ごろの銅製の納札もあり、それを大正時代に米国のシカゴ大の教授が見て感激して世の中に紹介したという。
 30分ほど歩き、堀江に近い国道196号沿いの手打ちうどんの店に入る。天ぷらうどんと釜揚げうどんとおでん3本と生ビールで1400円。
「ここのおうどんはおいしいわ」とレイザルはやけに喜んでいた。本日の遍路はこれまで。バスで松山市駅にもどってきた。 【つづく】

 


太山寺山門

 

 


こんな街角にも遍路道標が

 

 


円明寺の境内にある不思議な門