里の風景
延命寺は左手の山側に入ったところにある。山の中腹だから静かで心地よい。賽銭箱に「ばばちゃんへ…」とメッセージがはってある。取り澄ましている寺よりも、気の利いた落書きはあったほうが楽しいもんだ。
山門わきには、先端が四角錐になっている軍人の墓がずらりと並んでいる。四国を旅すると、そんな風景によく出会う。。これだけ悲惨な戦争の痕跡があるのに、「戦前がよかった」などという人が愛媛には多いから不思議だ。
寺のわきの小道をのぼり、墓地のなかへ。そのまま、阿方地区の畑と住宅が混在するちょっと落ち着いた里に抜ける。石碑や地蔵があちこちにまつってあり、花がいけてある。地域の豊かさを感じさせてくれる。
西瀬戸自動車道の近辺は殺風景だが、これをくぐるとまた落ち着いた田園にもどる。菜の花は、白菜もあれば小松菜もあれば水菜もある。どれもが黄色い「菜の花」であるのがおもしろい。
道路拡張で取りのけたためか、遍路道標や石仏をコンクリート壁の高さ1メートルほどの部分にわざわざ台座をもうけて安置してある。こういう感覚が残っている集落はきっと豊かな文化が息づいているんだろうなと思う。遍路道が今でも生きている証だ。
ため池の横を歩き、急な坂道をのぼると大きな墓地にでる。サヤエンドウの花と実、水菜の菜の花がまばゆいほど。
13時10分、国道に合流してしまう。左手には城のようなマンション?がある。すごいセンスだ。
「やけに病院が多いなあ。ここってそんなにみんな病気にかかるんか?」とレイザル。言われてみるとなるほど多い。
JRの高架をくぐってすぐに右に折れる。まちがえて今治駅に出てしまった。今治港方面に歩き、13時40分、五十五番札所の南光坊に着く。黒住教の寺?の後ろに隠れ、ペットボトルでつくられた無数の風車がくるくるまわっている。歴史の重みや威厳はないが、こういう風景もまたほほえましい。
【つづく】