
デラックス香園寺
麦畑の点在する集落を歩くと、唐突にソテツが1本あらわれ、その下に「カブトガニ……」の石碑がある。……の部分は「墓」なのか何なのか。
そういえば10メートルほどの椰子が1本だけ立っている、建設会社の資材置き場ほどの広さの空き地もあった。中山川の河川敷の笹の藪には数十羽の白鷺が群れていた。シュールな光景の連続だ。風景が異常にゆがんでみえるのは、車道の連続で精神的に疲弊しているせいなのだろうか。
15時前、国道11号と合流する。田園風景のなかの小道を15分ほどたどると、六十一番・香園寺の門があらわれた。緑豊かな里の雰囲気は気に入ったが、境内に入って唖然とした。本堂は鉄筋コンクリートの航空母艦のよう。ご本尊は2階にのぼったホールのなかにある。
ホールの椅子席に扇形に囲まれる中央の舞台の上に、大日如来やら弘法大師の像がある。
京都の東寺の近くに、昔の芝居小屋をそのまま利用した「デラックス東寺」というストリップ劇場がある。そこのつくりにそっくり。「デラックス香園寺」と呼ぶことにしよう。
不必要に金をかけた建物のくせして、「愛の道しるべ」などと「愛」を強要する。ブッシュや小泉と同じネオコン・「つくる会」系の臭いがする。
ありがたみがない寺に賽銭をやる必要はない。「もったいないから納経もせんでええで」と言ったが、スタンプラリーを完成させたいレイザルは律義に300円払っていた。
六十二番・宝寿寺は、里の小道をたどり、町役場のわきをぬけて1.4キロほど。こじんまりしていて、納経所前に藤棚があって、国道沿いなのに静かな雰囲気だ。
午後4時、この日の終点小松駅に着く。電車が1時間20分後までないため、駅前の「MARUBUN」という食堂に入る。洋風料理をだす手軽なカフェ風居酒屋だ。創業81年で、昔は旅館や普通の食堂をしていた。松山市の三番町にあるMARUBUNはここの支店だという。田舎の無人駅の前に、こんな店があるとちょっと豊かな気分になれる。
17時35分、桜井着。 妖艶だった駅裏の桜はすっかり葉桜になっていた。
【つづく】