愛媛遍路・夏 63番吉祥寺

2004年7月10日

 

 朝起きたら大雨。時折雷も鳴っている。「遍路びよりやな」というと、「エーッ、まさか行くんか」とレイザル。天気がよければ山、悪ければ遍路に決めていたのだ。
 9時前に松山を出て、小松町の香園寺近くのヤマサンスーパーに車を置かせてもらう。
 10時20分発。

吉祥寺

 

小松町の国道11号。トラックがコワイのだ

牛頭天皇

 狭い道をトラックが列をなして爆走する国道11号を東へ。JR小松駅を通り過ぎ30分ほどで、63番吉祥寺に着いた。木々が多いせいか、すぐわきの国道の爆音が境内ではほとんど気にならない。マリア観音があるという。
 ふと納経帳を忘れたことに気づいた。
「もう1冊買うか?」「4冊は多すぎや」「ノートに書いてもらってあとではったらええ」「そりゃあかん」「ええやんスタンプラリーみたいなもんなんだから」「納経とスタンプラリーはちゃう!」ってことで、次に来るときに納経だけすることにする。
 国道11号を東へ200メートルほど。2つ目の信号を右に折れ、最初の角を左に曲がる。1本入っただけなのに、旧道は静かで昔ながらの生活が息づいている。
 昔懐かしい畳屋さんがあった。最近では見られなくなった分厚い本物の藺草の畳を修理している。青いにおいが心地よい。
 石碑や地蔵などがあちこちにあるのもいい。野々市地区にある「牛頭天皇」と書かれた明治16年の石碑を見て、「なんや怨霊がありそうやなあ」とレイザルが怖がっている。牛頭天皇はインドの神の一種とも言われていて、祇園精舎の守護神になっている。祇園は妖怪をまつったのだ。忌み嫌われる妖怪も、まつられれば神になる。天皇だって似たようなものだろう。
 すぐ近くに、「日清」「日露」「日支大東亜」の忠魂碑が並んでいる。時代を追うにつれて碑が大きくなるのは、犠牲者が増えたことを意味するのだろうか。
 15分ほど歩くと、7、8メートル四方の巨大な藤棚が現れた。「阿弥陀寺ののだふじ」といい、藤棚の下に社がまつられている。木陰は驚くほど涼しい。
 平野と山の境界あたりを遍路道は通っている。ホウセンカやヒマワリ、ナス、トウモロコシ、サツマイモ、柿や無花果の青い実…。

【つづく】

懐かしの畳屋さん

 

巨大な藤棚