愛媛遍路・夏 64番・前神寺

2004年7月10日
水の町

  降水確率60%のはずが、いつの間にか空は晴れあがり、肌がちりちりと痛くなってきた。11時50分、石鎚神社の山門前の売店に入り、レイザルは編み笠を買った。7月1日から10日まではお山開きで石鎚神社の神さんは石鎚山の頂上にのぼっている。84歳という店のおじいちゃんは「あした神様が帰ってくるんよ」と心待ちにしている様子だった。
 64番札所の前神寺までは200メートルほど。正午のチャイムが鳴っている。腕時計を忘れたから、太陽の高さで時間を感じる。時計がないとそのぶん自然が近づくような気がする。学生時代は腕時計をもってなかったもんな。
 「打ち抜き」で有名な西条の寺だけあって、前神寺は水が豊富だ。がけの上やら山肌やらあちこちから水があふれている。塩素消毒をしてないからかのどごしもやわらかい。境内に金比羅さんをまつっている、密教系のいい加減さもいい。青赤黄白のたれまくが本堂にたれさがり、山の緑に鮮やかに映えている。
 オタマジャクシが無数に群れている水田はおそらく、農薬の使用量が少ないのだろう。水流の豊富な用水路には魚がはねまわり、上空には赤とんぼ。
 水路には民家から階段が刻まれている。ここで野菜などを洗うのだ。水はゴボゴボと音をたてて流れている。
 13時半、加茂川を渡り、200メートルほど上流へ行き、西条農業高校の南側を半周するようにして山際の住宅地に入った。遍路道には商店が少ないから、自販機がありがたい。
 水田のわきに立っていたお地蔵さん。毛糸の帽子が一体化して石のようになっている。「ストリート系のお地蔵さんや。クボヅカくんみたいや」(レイザル)
 水田と高速道路の間の木陰ひとつない道を耐え抜くと、林のなかの地道に入った。
 王至森寺の石段に座って水筒にあった氷をガリガリとかんで10分ほど休憩する。水田の道と、古い農家の並ぶ集落のなかの一本道を1時間ほど歩くと国道に合流した。
  16時に中萩駅に着いたが、電車が40分後までない。「新居浜まで歩こう!」とレイザルが急に元気になった。4,5キロだからぎりぎり間に合いそうだ。
 ぎりぎりで 17時20分発の普通列車に間に合った。
 小松町の景色のよい温泉に入り、豆乳うどんと生ビールでホッとした。体重は72.5キロになっている。水分を補給したら74キロ弱に戻ったってことだ。 【つづく】

前神寺

ストリート系、クボヅカ地蔵

 

西条は、石鎚の伏流水が豊富

▽10:18 高松116キロの道標。
▽ 10:54 吉祥寺
▽11:19 牛頭天皇
▽ 11:37 阿弥陀寺ののだふじ
▽11:54 石鎚神社 12:02 前神寺
▽13:29 加茂川
▽15:25 国道に合流
▽16:00 中萩駅
▽ 17:10 新居浜駅

【行程21キロ】