愛媛遍路・夏 新居浜-土居

2004年7月18日

 

 家にいるのは暑いが、歩くのはもっと暑い。行くも地獄、行かぬは地獄後悔。ならば地獄だけのほうがまだましだ。ってなことで新居浜へ。
 前回、納経しなかった2つの寺でスタンプを集め、うどん屋でウナギとうどんで腹ごしらえしたあと、国道11号沿いの「デオデオ」の駐車場に車をとめて正午に出発する。


金比羅信仰と大師信仰が
一緒になってる

 

遍路道では、この世とあの世が隣同士

ロバのパン

 国道の北側を平行して走る旧道は驚いたことにアーケードつきの商店街になっている。T字になっているアーケードは延長5,600メートルはありそうだ。中心街から遠く離れた郊外にこんな商店街があるとは驚かされた。「喜光地町」。古い商家や宿屋ふうの建物、幼稚園、農産物の直売場……。閑古鳥が鳴いているようなのに、不思議とさびれた雰囲気がない。別子銅山が盛んだったころの名残なのか、それとも宿場町の繁栄が今も残っているのか。
 商店街を抜けると、田園風景が広がる。青い柿や無花果が1週間前よりずいぶんふくらんでいる。暑さの盛りなのに秋のはじまりを感じさせる。
 さっき納経した前神寺で般若心経を聞いているうちに
「くってくってはーらーでーてー、くうそくぜいにく……般若レイチン〜クワッ!」と不届きな替え歌(替え経)を思いついてしまい、すっかりはまってしまった。最後のクワッ!と目を剥くのがレイザルのキャラクターをよく表している。歩きながら何度も繰り返してブラッシュアップした。
 13時、国道に合流。トラックの真っ黒な排ガスを浴びながら、ペースをあげて我慢の歩行だ。集落ごとにほんのちょっとずつ旧道はあるのだが、一度国道からおりてまたのぼらないといけないからなかなか入る気になれない。50分ほど歩いたあと、ようやく旧道に入った。
「やっぱ遍路道はええなあ。静かで風情があって」と言うと、
「痛しかゆしや。遍路道は自販機がないからジュースを飲めないやんか」とレイザルはうめいている。
 静かな遍路道のわきに「美鈴フラワー」というちょっとしゃれた店を見つけた。苔を直径15センチくらいの球形にまるめ、ひもでつるし、その下に風鈴をつけている。苔の玉が風にゆれるたびに涼しげな鈴音がなる。ええなあ、と思って気分よく歩き、涼しい風が吹き抜ける竹薮の道を抜けたらすぐに国道に出てしまった。
 そしてすぐまた遍路道へ。
 「チンカラリン……ジャムパン、ロールパン、チョコレートパンもいかがですぅ」
 軽のワゴン車が後ろから追いかけてきた。懐かしのロバのパンが、農村の集落を走る風景はなぜかホッとさせてくれる。ワゴン車には徳島の住所がかいてある。ロバのパンっていったいどこが発祥地なんだろう(解答はこちらhttp://robanopan21.hp.infoseek.co.jp/)。
 ロバのパンの歌も、レイザルの替え歌にアレンジした。
「サルのおばはん、ポンポコリーン。てんこぽっこてんこぽっこ、ヒヒーン」
「てんこぽっこって蹄の音とか、ヒヒーンっていななきとか、パーカッション楽しいやろな」(レイザル)
「そういえばあんた、乗馬服、最近着てへんやろ」
「もう入らへんやろな。悲しくなるわぁ」
 15時15分、国道を横切り、すぐに小道に入ってJRの踏切を渡る。腰ほどの高さの壁の上にずらりと盆栽が並んでいる。針金で枝の形が固定され、おもりまでつけられて、「巨人の星」の大リーグ養成ギプスをほうふつとさせる。
 川をわたり線路をわたり、番外の寺と、旧道沿いあった古民家を改造した将棋クラブをちょっとのぞく。
 16時土居駅に到着した。きょうは距離が短いわりに大量にジュースをのんだから腹がたぽたぽ。新居浜駅から車までの道のりを含めて本日の行程は13キロほどだった。

【つづく】


苔でつくった風鈴

 


水路と生活のつながりがわかる