あみだ会から江戸へ@

1999年9月  レイザル作

 

 大阪で以前勤めていた会社の人たちがとある会合に誘ってくれた。
 「あみだ会」
 入ったら最後、勝つまでやめられない恐ろしい結社である。
 会場は大阪のとある一角にある鉄鍋餃子の店だ。「あみだ負け」せぬよう、腹を思いっきりすかせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あみだ様の誘惑

 午後7時すぎ、三々五々メンバーが集まってくる。みな鬼気迫る顔でニタリと微笑む。復讐に燃える顔、顔…。前回ビギナーズラックで勝ち、そのまま会社をやめ、なんとなく後ろめたかったのだが、「あみだ様」よりお誘いのメールがあり、とるものもとりあえず駆けつけた。 「いやあ、退職金ありったけで払いますよ。」と啖呵を切った。(「退職金あるし」と買い物するのは最近の癖。気持は大きいけど、退職金はもう残ってないはず:ゴロ談)
 とりあえず、飲めるだけ飲み、食べれるだけ食べた。みんなこうやって泥沼にはまる。
 そう、「あみだ会」とは、飲み食いした料金をあみだくじで割り振っていくシステムなのだ。1位タダ 2位1000円…6位10000円、といった具合だ。
 退職金を大盤振る舞いするつもりできたのだが、また勝ってしまった。 無欲の勝利、といいたいが、ゴローの「絶対勝ってこい。」の激励と毎日じゃんけんで気を高める訓練の成果だろう。
 ごちそうさまでした。

 で、この「あみだ会」のあと、東京行きの夜行バスに乗った。
 大阪のバスターミナルでは彼女を見送る若い男の子の姿があった。 その男の子に見送られているような気になって、いい気分でバスに乗る。 座席は「9C」。窓際。彼女は中央列。ざまあみろ。窓際の席を譲ってなんかやるもんか。
「私の方ばかり見てたらばれるじゃない。またすぐ会えるわよ」。心の中で彼と別れを告げる。
 朝、寝不足でふらつく足で新宿駅に立つ。高速道路が珍しくて一晩中景色を見ていた眠れなかった。
 そういえば、どこへ行くのか決めていなかった。退職金はあるし、高級ホテルでの「パワーブレックファスト」も捨てがたかったが、なにぶん天気がいい。台風の影響で風が強く雲が早い。
 よし、海へ行こう!と横須賀線に乗り「逗子・葉山」へ向かう。
 逗子駅を降りる。古びてはいるけど、さびれてはいない商店街は魚屋さんのにおいがする。お屋敷外を抜けて海へ向かうにつれて潮のにおいが強くなっている。所々、「マンション建設反対」の看板が出ている。お屋敷を維持できなくなったのだろう。「中古マンションいくらかなぁ」などと考えているうち海岸にたどりつく。
 8時半の逗子湾はウインドサーフィンをする人、犬を連れて散歩する人で静かににぎわっていた。20年近く海のそばで育ったが、橋や人口海岸の建設で景観は見事に破壊された。湘南の海を見ていると、海が海のままという当たり前のことがうらやましい。
 海岸沿いを歩く。80年頃にサァーファー達が通い詰めたポップなアメリカ風の建物も時間と潮風で少し古ぼけてきて、昔からの家並みとなじんできた。アサヒビールの保養所の真新しさが浮いている。企業の保養所だったところが宅地になって売り出されていた。
 途中バスに乗ったりしながら、葉山を過ぎ、横須賀市との境まで来た。長者が崎では大勢のサーファー達が波を待って海に浮かんでいる。風が強く時々波しぶきが届くのが気持ちいい。肺の底まで洗われる。
 サーファー達と波を見ていたらバスが来た。結局ナンパされなかった。今の世の中なにか狂ってる。

【つづく】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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