旭岳からの帰り、東川町のギャラリー兼そば屋に寄る。「女性の作ったそば」を味わう。
庭にもうけたテーブルに座ると、まず大きな氷が入った水差しをもってきた。水がうまい。これならそばも期待できる。
とろろざるそばの大盛り(1100円)は、コシがあって、水がいいせいか甘みさえも感じる。そば湯ももちろんよし。でも八ヶ岳山麓の「翁」のソバほどじゃないかな。
正午すぎまでのんびりしてから、飛行機まで時間があるから富良野を目指す。
美瑛の街の商店街は、似たようなデザインの家が並ぶが、家と家の間隔が広いから、間が抜けた印象を与える。冬場の雪を処分するためには、これだけの土地の余裕が必要なのだろう。冬に来てみたいものだ。
裏道を走っていたら、富良野への方角がわからなくなり、そのうち、噴煙をあげる十勝岳をのぞむ広大な丘の上に出た。麦やじゃが芋が一面に植わる丘が地平線まで波打つように続いている。
観光バスも行き来し、アマチュアカメラマンが、あちこちに路上駐車している。富良野までいくのはやめてこの近辺でのんびりすることに決める。
「拓真館」という看板の名にひかれていくと、美瑛の風景を撮りつづけた前田真三氏の写真館に行き着いた。入場無料。
想像以上にすばらしい。風景写真はそれほど興味はなかったのだけど、レンズや絞り、シャッタースピードなどのデータが記されていて勉強になる。
多くの写真は思い切りしぼって、低速のシャッター速度だ。三脚があっても素人ではぶれてしまうだろう。300ミリの望遠レンズでF32、2分の1秒など。望遠でひっぱりながら、被写界深度を深くするためなのだろう。「風景写真は絞り優先」とは以前から聞いていたが、こういう写真を見るとよくわかる。
望遠レンズを使うときは被写体から離れ、広角を使うときは寄るというセオリーも写真を一同に見ると「なるほど」と思う。35ミリレンズで撮った麦の穂の写真なんかは思い切り近づいて、画面の下3分の2を麦の穂にすることでほつれげのような細かい毛まで写しこんでいた。
【つづく】