大雪の山上の湯 2

2001年7月18

お花畑

 午前5時、ホテルの窓には光が満ちあふれている。木々の緑とウグイスの声がすがすがしい。窓をあけて外を見ると雲ひとつない。
 午前7時のロープウェーで山上へ。往復2800円。標高1600メートルの「姿見の池」までは5分ほどだ。気温は20度。けっこう暖かい。
 旭岳が眼前に堂々とそびえ、地獄谷からわき上がる白い煙が濃紺の空に吸い込まれていく。
 「ヒグマに近づかないために」という看板がある。クマよけのカウベルをガランガランと響かせて登山者がつぎつぎに歩き始める。北海道の山に来たなあ、と実感する一瞬だ。姿見の池方面へ向かう観光客と離れ、裾合平方面への道を選ぶ。昨日まで雨が降り、きょうになって急に晴れ上がったせいか、路上でミミズがのたうちまわっている。
 旭岳の姿を映す池はまだ半分以上、雪に閉ざされている。5分も歩くと、高山植物の群落にでくわす。
 白い5枚の花びらと中央部が黄色いチングルマは、パラボラアンテナのよう。微風にフルフルと揺れる。眼下には雲海が広がる。写真家のSさんもあまりの条件のよさに興奮気味だ。
 エゾノツガザクラ、エゾコザクラ、ガンコウラン……。ガイドブックで名前を確認しながら歩をすすめる。
 写真の専門家と一緒だといろいろ教えてもらえるから楽しい。SさんのもってきたカメラはニコンFM2とコンタックスG2。レンズは15ミリ、20ミリ……とズームを含めて200ミリまで。機材だけでも大変だ。
 「雪をとるときは、露出をプラス1段くらい多めにするといいですよ」。標準の露出では、雪が灰色っぽくなってしまうという。「雪は白くていいんだよってカメラに教えてあげるつもりで」という。逆に真っ黒のものを撮るときは露出を少なめにする。標準露出では灰色っぽくなってしまうからだ。以前にウダさんにも教えてもらったなあ。
 目の前にはヒップ岳。その下に、正三角形の「大塚」がある。冬場はこれを目指して、標高1700メートルの等高線に沿ってスキーを滑らせれば中岳温泉にたどりつけるという。
 8時5分、南を振り返ると、十勝岳方面まで見える。 【つづく】

チングルマの群落。背景には雲海が…

 

おそらくツツジ科の植物?

 

紫の花はなんだろ?