大雪の山上の湯 4

2001年7月18日

温泉に入る

 Sさんが「すいません、写真を撮らせてください」と叫ぶと、素っ裸で入浴中のおっちゃんが「いぇー」とVサイン。
 「いい湯ですよお。定年になったもんでひまだもん」  北海道はもう3周目。今回はお盆前まで約1カ月間旅行する予定という。昨夜は1泊200円の野営場でオートキャンプをした。きょうは花を見たくて登ってきたとうい。
 「遠慮はしないよ。山のなかにあるのがいいですよ。もう最高。大満足です。入れるなんて夢にも思わなかった。2人で5600円の入浴料だね。ハハハッ」
 5分後、斜面の上からカウベルを鳴らしながら降りてきたのは群馬の男性。やはり定年退職して百名山を登っている。「いい湯だなあ。ビールがあったらいいのにね。最高だね」
 僕もいてもたってもいられなくなり、ぱっとぬいで入った。温度を測ると38度。ちょうどよい。雪渓から流れ出る冷たい水を入れて、温度を調整する。尻の下から小さな気泡とともに熱い湯が噴き出している。53度あるからやけどしそうになった。
 ヒバリのような澄んだ鳥の声。少しずつ雲が流れていく。濃紺の空と白い雲と雪。真下には緑の平原。上は切り立った谷と雪渓。
  しばらく入っていたら、上からは黒岳方面から縦走してきた登山者が、下からはこれから黒岳方面に向かう登山者が2人、3人とのぼってきた。カランコロンと熊よけの鈴を鳴らして。
 11時になると、10人ほどになり、みんな足だけ湯につけている。こうなったらもう服は脱げない。
 ちょっと早い昼食と、ウィスキーの水割りをのむ。あたたまった体にすうっと回る。気温は20度。大阪の4月並みだ。 【つづく】

見晴らし抜群の中岳温泉。着替えるのは気を遣う

 

上の登山道は、大雪のお鉢平にむかう