日本のアジア 釜ケ崎@

1997年7月

 

おっかないイメージがあるけど、朝市なんかは東南アジアの市場みたいでおもろいで。日本で一番アジアを感じられる街やな。1泊1500円くらいのドヤ(簡易宿泊所)がいっぱいあるけど、仕事がないおっちゃんらは泊まれず、最近は外国人や学生の貧乏旅行者も多い。きれいじゃないけど食堂は安いし、学生が社会勉強も兼ねて来るにはぴったりやな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喧噪の朝

午前4時半、夜の色を残す中空に半月が浮かんでいる。
 JR新今宮駅南側の一角は、電車もまだ動いていないのに、自転車や徒歩のおっさんたちが行き交う。野球帽をかぶり、運動靴や地下足袋、つっかけをはき、足早に歩く。北京の天安門広場のようにワサワサしている。
「ゆうべは寒かったな」
「台風の影響で風が強くて、寒くて寝られへん」
「あんたは日本橋か?」----
ほとんどの人がアオカン(野宿)なのだ。
 古びた鉄筋コンクリート作りの「あいりん総合センター」わきの道路に、手配師のバンが次々に横付けする。「○○建設」「○○株式会社3号車」などの文字が車体におどる。手配師が顔見知りの労働者に声をかけていく。

 「兄さん(この会社で働くのは)はじめてか?」。 背後から50歳前後の男性の声がした。「はい」と答えると、
「ワシもはじめてや。声かけてみようと思ってな」
だが彼は、いつまでたっても手配師に近づこうとしない。「どうせダメやしな…、せやな…」とつぶやいてモジモジしている。そのうち、手配師は40歳代の元気のよい男を乗せて行ってしまった。
 露店があちこちに開く。鍋や釜を売る古道具屋や古着屋、バナナを山盛りにしている店もある。飯屋からはみそ汁の匂いが漂う。

【つづく】

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