カニづくし
部屋に落ち着いてまもなく、料理が運ばれてきた。
カニの刺身、焼きガニ、カニ鍋、カニミソのグラタン風、その他1匹。焼き牡蛎、牡蛎フライ、刺身の舟盛り…。アレヨアレヨという間にテーブルいっぱいに料理が並んだ。
「いったいだれが食うねん」
「こんなたくさん食えるんか」
「なんやこんないっぱいあったら、かえって食欲なくなりますねえ」
2,3年ほど前、福井の芦原温泉の旅館に泊まったことがあるが、1泊2万円くらいするわりに、小さめのカニが1匹しかなかった。 「北陸のカニといってもこんなもんか」と思った。
「カニは旅館より民宿」と聞いてはいたが、これほど違うとは。牡蛎とカニの刺身がことにおいしかった。
話題は当然、美人ちゃんとキョージュのカップルに流れていく。意外にも、彼女がキョージュを「京都の紅葉、案内してください」と誘ったのがきっかけだったそうだ。
最年長のオカミさんは、 「ふむふむ、紅葉か。メモしとくわ」。
「確かにこれは使えるな、フンフン」(タッキー)
「『お花見にいきませんか』も使えるんちゃう?」(オカミ)
「ふむふむ」(タッキー)
「『鯉のぼりに行きませんか』もいけるなあ」(オカミ)
「夏は『海に行きませんか』ちゃう?」(タッキー)
「秋は、あ、また紅葉やんか。あっちゅうまに1年たっちゃうやんか……。それはそうと、クリスマスは迎えられないの?」(オカミ)
「2年やって成果なかったら麻酔銃やな」(レイザル)。 元オツボネOLの発想は恐ろしい。
オカミさんとタッキーの論争?がひといきつくころ、美人ちゃんが口を開いた。
「いい女は男の学校です」
「ええこというなあ」。一同声をそろえてうなずく。
「うちは戸塚ヨットスクールや」(レイザル)
一同、深くうなだれてうなずく。
ボージョレヌーボーとワインと日本酒で、深夜2時まで歓談した。 【つづく】