長崎--カステラとチャンポンの街A

2001年1月27-28

南山手探訪

  飲み屋の建ち並ぶ「思案橋」という歓楽街に出る。と、横道に「天天有」という店が見えた。下町の中華屋さん、という気取らない雰囲気。「ガイドブックで見たで」とレイザルも太鼓判を押す。彼女にとっては「るるぶ」はバイブルのようなものらしい。
 チャンポンも皿うどんも750円だが、「特製」だと1100円になる。もちろん「特製」を頼んだ。が、テーブルに運ばれてきて、クビをかしげた。特製にしては盛りが少ない。天草の「大空食堂」のチャンポンのインパクトを期待していたから、ちょっと拍子抜けした。まもなく隣の席に普通のチャンポンが来て違いがわかった。「特製」には海老やキクラゲが入り、「普通」には蒲鉾が入っているのだ。豚骨スープが濃厚で味はなかなか。皿うどんはあんが甘みがあっておもしろい。酢豚(2000円)は高いけど、肉がジューシーで美味だった。

  翌朝、オランダ坂を歩く。岩盤を垂直に切って道とした坂は石畳で風情がある。
  斜面を垂直に切った場所に建てた家が多い。
「北側の部屋、真っ暗やで。風通しも悪いんちゃうか」(レイザル)。モデルルーム見学の癖が抜けないようだ。
 ここを歩くのは高校時代以来だろう。活水学院の女子高生をナンパしたくってブラブラ歩いたけど、結局声をかけられなかったんだよなあ。何とも言えない情けない旅だった。
 「東山手洋風住宅群」は、かつての洋館を集めて保存してある。以前にはこんな場所があった記憶はないから、おそらく、ここ十年程度で整備したのだろう。
  目を離したすきに、レイザルは清掃のおっちゃんたちに話しかけている。「神戸の長田にいた」と聞いて「えーわたしも神戸や」って調子でつけ込んだらしい。
  おっちゃんは長崎出身だが25年前に父親の看病のために神戸から戻ってきた。そう聞いてレイザルが「よかったやん、地震にあわんで」と言うと、
「地震にあった方がよかったかもしれん……。もう一度有馬温泉に入りたいなあ」とつぶやいたという。そう聞いてレイザルが珍しくしんみりとした顔になった。
 が、大浦天主堂に近づき、土産物屋が並ぶのを目にするともうソワソワしはじめた。職人の店「清風堂」の店の隣には別のカステラ屋があり「添加物は加えてません」などとうんちくを掲げている。ここのおばちゃんは「うちのがおいしいもんだから、試食だけしてみんな(隣の)安いのを買ってしまう……」と愚痴っている。それを聞いていりもしないのにカステラを買ってしまうのがうちのサルらしい。
  「名前の福砂屋かな、緻密さの文明堂かな、瑞々しい清風堂かな、上品なここかな、迷うところや……」とレイザルは真剣に悩んでいる。東京の銀装のチョコカステラもおいしいという。日々、甘い物のことばかり考えてるんちゃうか。
 大浦天主堂はなかなかいい雰囲気。グラバー公園も昔と変わらない。洋館を見学しながら、
「この家、風呂ないで。台所もないやん。でも四方に窓があるから通風採光は抜群やな」としゃべり続けている。なんだかマンションのモデルルーム感覚でいるようだ。 (五島列島編へつづく)

 

 

【旅のデータ】

■航空運賃■
前日予約の特割で片道15500円

■天天有■
飲屋街「思案橋」にある中華店。
濃厚豚骨スープのチャンポン

■桃花園■
中華街の中華料理店
チャンポンはあっさり系。

■ホテルモントレ■
チェーンのホテルで南欧風。
落ち着いた雰囲気で女の子が喜びそう。
観光には便利。
11000円。2度目の宿泊では割引され8900円
(2人でシングルルームを使用)