背後の棚には、名前も聞いたことがないウィスキーがずらりと並ぶ。多くがシングルモルトという。
ピュアモルト、シングルモルト、シングルバレル、シングルカスク……。
どれも聞いたことがある単語だけど、どんな違いがあるのかは知らなかった。
ピュアはいろいろな地域のモルトウィスキーをブレンドしている。シングルモルトは、1つの樽元?のウィスキーだけを使う。シングルバレルはその樽元のある特定の樽のもの。シングルカスクは水などでいっさい度数調整をしていない……。うろおぼえだが、マスターはそんな説明をしてくれた。
シングルカスクのウィスキーの瓶には樽番号まで書いてある。ブレンドせず、その樽の一番いい部分だけを出荷するから、味の個性を楽しめるという。
薄いグラスに3センチほど注いでマスターは口を開いた。
「まずはストレート。鼻の前をさっと横切らせて匂いかいで。鼻にくっつけすぎるとアルコールで嗅覚が麻痺してわからなくなるからね」とマスター。
なるほど、ウィスキーにしてもブランデーにしても、最初はいい香りがするのに3分もしたらわからなくなるのはそのせいだったのか。
【つづく】