竹富島A

2001年9月10

海の色は何色?

 星砂で知られるカイジ浜(皆治)へ。牧場のわきの小道には、色とりどりの蝶が花から花へと渡り歩いている。
 浜の入口の木陰に即席のあずまやを建て、女の子が2人、三線を弾いている。波と風の音がとぎれた一瞬にベンベンという音がかすかに聞こえてくるのが心地よい。
 透明感のある緑がかった海の色を、何色というのだろう。手垢のついた表現だと「エメラルドグリーン」となる。が、日本語では瑠璃色というのか翡翠色というのか。日本語には色をあらわす単語がひときわ多い。それだけ微妙な色を見分ける能力があったということだ。が、僕らの世代はそうした感覚を失ってしまっている。外来語に頼らず表現したいものだけど。
 ガジュマルの木を激しく揺らす風は15メートルはあるだろうが、岸にうち寄せる波はせいぜい50センチ。サンゴ礁のおかげだ。ビジタ ーセンターの展示によれば、竹富島のある石西礁湖は東西20キロ南北15キロの日本最大の珊瑚礁だ。大台風のときもここだけは被害にあわなかったという記録もあるらしい。
 コンドイ浜は白砂のビーチ。ぱらりぱらりと泳いでいる。更衣室もシャワ ーも無料。台風による強風のせいで、海底の砂がまいあがり、水が濁り、熱帯魚の姿が見えないのが残念だ。
  ときおり雲間から太陽が姿をあらわすと、海面が生気を与えられたかのように鮮やかに輝く。
 昼過ぎ、喜宝院蒐集館へ。日本最南端の浄土真宗の寺の住職が何十年かけて集めた民俗資料を展示している。寺といっても壇家は1軒もいないという。
  琉球時代の瓶棺や瓶、古代の鳩日銭、戦前方言を話した子に罰としてつけたという方言札、戦時中の兵士の双眼鏡や制服……。のどかな島人が琉球王朝に制服され、明治期にヤマトの政府に組み込まれることで自分たちの言葉さえも否定される。
 圧巻は御真影を祀ったという神棚?だ。「戦後、ほ とんどたたき壊されたが、手の込んだ細工がもったいないと思って残しておいたんですよ」と館長の上勢頭さん。
 展示物にはほとんど説明がつけられてないが、事前にちょっと勉強するだけで、外界に翻弄され続けた島の歴史が見えてくる。 

  【つづく】

コンドイビーチ

 

 

最南端の寺、喜宝院の周囲