午前8時前に起きて、観光案内所へ。
駅の真横のビヤガーデンを教えてくれたおじさんがいた。
昨夜は、地ビール2種類「遠野ビール」と「ZUMONAビール」を飲んだ。ZUMONAは銀河高原ビールのように濁りがあって燻製のような香り。鮭とホタテとサンマの燻製や、甘みがある枝豆もビールに合った。
「ビールうまかったです」
「んだべ。遠野は日本一のホップができるがら」
「ラベルにあったサツマイモのツルみたいなやつやね」(レイザル)
「そうだ。ZUMONAってのは『むがす、あったずもなぁ』という昔話の始まりからつけたんだ」
なるほど。
レンタサイクルを借り、線路を北側に渡って北東へ。水田のなかに古びた石碑や朽ちかけた木の鳥居が点在するのがおもしろい。「さすらい地蔵」やら「きつねの関所」やら、なんていうことないモノなのだけど、懐かしい雰囲気を醸し出す。
「伝承園」(300円)は、昔の農家などを移築した観光施設だ。曲がり家の暮らしの様子がよくわかる。畳が敷いてなくてすべて板張りだ。
「なんや、フローリングやんか。結構すすんでんなあ」(レイザル)
曲がり家で、もんぺをはいたおばあちゃんが2人、ほうきを手にして掃除している。
「蚕は今でもやってる人はいるんですか」ときくと
「もうやっでねえ。○○の方でちょっどあるだけだ。かわりにホップとタバコだな」
「米もビールもおいしいよね。水がいいからかな」(レイザル)
「山梨の孫も、ばあちゃんのみそ汁がうまいっていうだ。同じ具入れでも同じにはならんっていうだ。水がええんだろ。さみーけどよ。うぢのおどうさんも空気がええっていっでるだよ。……んだども、おらのいっでるごど、わがるが?」
英語よりはわかる。 曲がり家の見学を終えて出ようとすると、 「まぁたねー、また来てねぇー」と元気よくほうきを振ってくれた。
隣の「工芸館」に入ると、部屋の隅の小さなテーブルを囲んで、もんぺ姿のおばあちゃん4,5人が煎餅をかじりながらだべっている。
「煎餅はやっぱり草加煎餅だ。埼玉がいぢばんだ」
「草加って東京じゃねえべか」
「んにゃ、孫が埼玉にいるからまぢかいねぇ」… 僕らに気づくと 「どんぞぉ」「いらっしゃあい」と大声をあげる。 土産物や織物の展示はたいしたことないけど、おばあちゃんが座っているだけで、独特の雰囲気を醸し出す。
「ええ感じや。記念館とか作るより、おばあちゃんが展示してある方がずっとええわ」。レイザルにはおばあちゃんが展示品にみえるらしい。
【つづく】