二日酔いの朝、近所の遍路道を歩くことにする。三坂峠のふもとの久谷にある47番八坂寺をスタート地点に選ぶ。
寺の前の家の軒下にはネコがねころがっている。銀杏はまっ黄色で、青空に映える。山門の屋根には、仏陀の周囲を天女が囲む天井絵が描かれている。
「極楽というのは、ハーレムなんやな。それにしちゃお釈迦さん、喜んだ顔してへんな。なんでむっすりしてるんや」
早くも妄想がとびまわりはじめた。山門をくぐって、石段をのぼると本堂がある。わきには大きな新しい墓地あり、松山市の中心部までずっと見渡せる。
13時5分発。山門を出てすぐに左へ、細い路地のような道へ入る。枯れ枝には赤い柿が3つ4つ。斜面にはミカンが実り、平地部にはイチゴのハウスがたちならぶ。秋と冬と春の幸が交錯している。寺で般若心経をきいたせいか、前々回の遍路のときに編みだしたレイザル風ダイエット経を口ずさみはじめた。
「食う即ぜい肉…贅肉そく付く…」
「いいとこだねえ。でもさぁ。(松山市が進める)坂の上の雲の町づくりのサブゾーンになってるってのが気になるのよね」
あぜ道を下るとすぐにため池があらわれる。そのわきを車道まで降りると、無数の黄色い葉が風に舞う銀杏並木があった。「冬ソナのロケ地やで」とレイザルが騒ぎ、ヒロインのチェジウのまねをして「写真撮れ!」という。
畑のなかののどかな一本道をたどる。こんもりした神社がある。キャベツのような葉だけど、茎が木のように堅くで太い作物はいったいなんだろう。
畦には黄色い和タンポポが咲いている。青空に掲げると、青と黄色のコントラストがみごとにはまった。白いタンポポもあるけど、在来種の和タンポポって何種類あるんだろう。きょうのタンポポは、花の中心部に、黒っぽいめしべ? が数本あった。
13時25分、別格9番の文殊院。「八十八ヶ所発祥の地」という。河野衛門三郎の伝説が残っている。
「くさもち食べたいなあ……うどん食いたいなあ……」。腹が減ったのか食い物の話題ばかり。
二車線の道路をわたる。この道を行けばうどん屋が何軒も集中している「うどん街道」に出るから、「ねえ、こっちいかへん」というが、「西林寺まで行けば目の前にうどん屋があるやん」と説得して、また細い道に入る。
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