ベトナム市場と美女紀行1 200510

古都フエ 1

 ビルマにしようか中南米にしようか迷ってるうちに、ぎりぎりになって泥縄でベトナムに決めた。
 ガイドブックも読まぬまま、えいままよ、とホーチミン経由フエまでのチケットを買った。フエからホーチミンまで自転車で行けたらええなあ、なんて考えたけど、1000キロ近くあるときいて、こりゃ無理だとあきらめる。
 飛行機に乗ってから、ベトナム語でせめて数字くらいは言えるようにしようとにわか勉強。万単位まで覚えないといかんから大変だ。
 ベトナムの大地は、田んぼが整然と区切られている。山際や丘陵地は日本のような棚田になっている。ホーチミンの目の前には蛇のようにうねる巨大な川。改修していない川というのは生き物のような生気を感じる。
 川のなかに家が並んでいる、と思ったら、三階だての別荘風のきれいな建物が並んでいる地区もある。金持ちも出現してるんだなあ。
 飛行機を乗り継いで古びた飛行機でフエへ。午後7時40分に着く。タクシードライバーたちが寄ってくる。 「いくら?」ときくと6ドルという。たいしてぼらないことに驚く。
 道に出ると、まさに東南アジアのにおいだ。親子4人乗りというバイクが何台も横に広がって走る。自転車もまざってる。後ろからクラクションを響かせておしのける。
 ホテルで一休みして、夜の街へ。シクロのにいちゃんが「ワンダラーで1周するぞ」「女の子いるよ」と声をかけてくるが、フィリピンのようなしつこさはない。
  ベトナムの子はほんとにかわいいなあ。あとで自分の写した写真を見ると素朴なネエちゃんという感じなんだけど、じかに会うとホンマにきれいに思える。石川文洋がはまるというのもよくわかる。アオザイを着てるとさらに色っぽい。
 観光地だけあって、表通りは土産物屋。レロイ通りのあたりは西洋人好みのオープンカフェ風レストランが並ぶ。裏通りに行くと「カラオケ」が何軒も並んでいる。ちょっと高級なクラブといったつくりの店が多い。ネットカフェは満員。数十台並んだパソコンの前にずらりと若い人が座っている。すごいなあ。これじゃあ情報を遮断しようがない。ホテルや店のサービスもいいし、愛想もいいし、貧富の差もあるし……よくもあしくもかつて見た「社会主義」の国ではない。
 屋台でフォーをたのんだら1万ドン。ビールは6千ドン。1ドルちょっとの夕食だ。出てきて驚いた。韓国冷麺のような半透明の細い麺でこしがある。香草やチャーシューがのって、色合いも華やか。透明のスープはあっさりしている。
  古都だけあって味が洗練されているのかな。美人が多いのも古都のせいかな。

 5時半ごろからテニスコートの音や、バイクの音がしはじめて目を覚ます。
 窓のないシングルルーム3ドルのミモザホテルに荷物を移してから、旧市街方面へ歩く。川をわたると、すぐわきに市場がある。入り口で花を売っていたおばさんに写真をとらせてもらう。
 王宮の遺物をおさめた博物館、入場料は高いが、受け付けの女の子が素朴でかわいいんで入ってしまった。フエの大学で日本語を学んでいるという25歳。
 フエの古城跡は世界遺産だ。中国の文化の影響かよくわかる。が、遺跡は遺跡でしかない。1時間ほどで見終わって新市街にもどる。昼食は、ぼろぼろのご飯の上に生姜で焼いた豚肉と、キャベツ、人参などの酢漬けなどを載せ、野菜スープをつけた定食。5000ドン。安い。ところが観光街の出店でのんだビールは1万ドン。なんともまあ。

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古都フエ 2

 ホテルに出入りしているバイクのあんちゃんと契約して、郊外にあるというパゴタを見に行くことにする。
  川沿いの丘の上、パゴタそのものも立派だが、その裏の建物に1台の自動車が飾ってあるのに目を奪われた。昭和30年代くらいの古い車だ。ボンネットの上に写真パネルがある。お坊さんが焼身自殺している。ベトナム戦争の歴史のなかに出てくる有名な坊さんだった。その人をのせてサイゴンの現場まで運んだのがこの車だという。こんなのどかな寺の僧だったのだ。
 「王の墓」にもついでに行くことにする。鉄道の橋の横の幅1メートルもない補助橋をわたり、ひたすら田舎へ。牛が道端を歩く東南アジアらしい風景になると、カラフルな線香を売ってる店と、寺院があらわれる。運転手の彼も仏教だという。ホテルには布袋さんとなにかの神像が飾ってあり、赤い電気の灯明をともしている。「社会主義国」イメージが遠のく。治安のよさはおそろく社会主義のなごりだろう。一定レベルの教育がおどこされたり、貧富の差が小さかったりすると、治安はよくなる。が、すでに物ごいの子がちらほら。今のベトナムくらいが、安全で、それでいて刺激もあって、人もよくて、客引きはあるけどそれほどしつこくなくて、旅行するにはちょうどよい。あと何年かすると、タイやフィリピンのようになるのかもしれない。
 夕方になると、堂々とカメラを外に出して歩けるようになる。街の治安の程度が体でわかってくるからだ。朝訪れた市場に足を踏み入れる。市場が楽しいのは、珍しい果物や野菜があって、それを撮らせてもらうついでに人の写真も撮れるところだ。ゴーヤがあるのにはちょっと驚き。
  王宮方面に歩いていくと、中国将棋をやっていた。ちょっとだけすわって見学した。
 夕方、ホテル近くで女の子の2人連れに声をかけられた。フエ大学の学生だという。1人は中国語を勉強している。「なぜ中国語?」と尋ねると、出身が中国国境のカオバン?だという。 2人とも20歳。「テヅカオサムという人の写真集が好きだ」という。へえ、どこかで聞いたことがあるなあと思って後から気づいた。漫画家の手塚治虫じゃないか。
 夜、欧米人が好きそうなカフェ風のレストランに入って、魚のスープをたのんだ。ハマチのような魚の切り身が入っていて、生姜やトマトの酸味とパイナップルの甘みと唐辛子の辛さ。さらに青い香草がたっぷりふりかけてある。汗をだらだら流しながらすする。スープとビール2本で4ドル弱の食事だった。