200503-05

中山町・漆地区の棚田の梅 20050319

 国道56号から左手の山道に入り、杉林のなかをつづらおれに走ること10分ほど。明るい斜面の集落がぽっかりと現れ、尾根近くまで積み重なる棚田を白やピンクの梅が彩っている。白梅、紅梅、八重、一重……と咲き乱れている。
 梅祭りは3月初めの週末にあったが、今年は今がちょうど見ごろだ。畑のなかをぬうように梅見学のための散歩道があり、駐車場の近くには「ご自由にどうぞ」と杖が用意されている。山全体に甘いかおりがただよう。
 昔は田と、トウモロコシやイモなどをつくる畑だったという。梅を植えるようになったのは戦後になってから。日当たりが悪いから米には向かない。でも梅ならば湿気が多い方が望ましい。地域のアイデアマンがそう判断して梅の木を植えたという。
 出会ったおじいさんも田畑を作っていた棚田に梅を植え、一部に栗林にした。
「中山の栗はおいしい。畑田の栗タルトの栗はここから全部出してるんやけん」と誇らしげだ。
 山奥のどんづまりの集落だ。
「ここにも平家の伝説はありますか」と尋ねると、
「伝説があるわけじゃないけど、わしらはそう思っとる」と答えた。
 梅祭りは10年ほど前から催している。洗濯物や漬け物、トウキビを干した農家の庭先、畑のなか……と、人々の暮らしのなかをたどれるのが楽しい。
 散歩の後は集会所前の特設売店へ。
  中山の巻きずしは、山間だけあって、ゴボウやニンジン、かんぴょうといった野菜ばかりで酢飯は甘い。海産物が入ってないから最初は物足りないが、ヘルシーで何度食べても飽きがこない。
 梅肉エキスを買った。大量の梅をしぼって果汁をとり、それを何時間も煮詰めて作る。ジャムの瓶1瓶で2000円。腹をこわしたときにはこれがよい。大手メーカーの作るエキスの半額だという。
 帰途、伊予市の自然農法家、福岡正信さんの田んぼに寄った。黄色い菜の花が一面に咲いていた。周囲の田がまだ茶色い地肌をさらしているから、ここだけが天国のよう。
  米麦連続栽培でこの時期は麦が生えていてもいいはずなのだけど、菜の花に隠れているためか見つからない。体調を崩して種もみをまけなかったのかなあ、とちょっと心配だ。




初夏の久住山行@ 20050506-08

  長者原の登山口に午後1時すぎに到着すると、しとしとと冷たい雨が降っている。
 3年ぶりの道をたどる。
 雨中の新緑は、みずみずしくてまぶしいほど。釣り鐘のような小さな白い花があちこちに群生している。シロドウダンという。3年前の冬に道を取り違えた雨ケ池の峠をへて1時間半ほどで坊ガツルに出る。大雨のため午前中は平原一帯が池のようになっていたという。
 なつかしの法華院温泉には2時間ほどで着いた。1泊2食+昼食の弁当で1人8700円。
 建物は増築してあり、風呂も新しくなっている。客は3組だけ。静かな湯にゆっくりつかる。
 肉や豆腐を主体としたパワーディナーに大盛り飯を平らげる。エビスビールがありがたい。
 早朝6時、中高年グループが出発する物音で起きる。おそるおそる窓の外を見ると、雲がたれ込めているものの雨はやんでいる。
 朝食をとり、午前7時半に出発。坊ガツルの東縁をたどり、鉾立峠へとむかううちに、晴れ間が出てくる。
 シロドウダン、イワカガミ……点々と咲く花、花。最盛期はさぞ美しかろう。ウグイスなどの鳥が疎林のなかをさえずり飛びまわっている。(7時45分に峠着)
 鉾立峠から白口岳までは所々岩をよじのぼるきつい登りが約1時間半つづく。沿道はミヤマキリシマだらけ。大部分は堅いつぼみだが、ところどころピンクの花が咲いている。あと2週間もすれば全山が赤く染まるのだ。
  久しぶりの陽光に、苔や草木がみるみる青々となっていくのがわかる。
 8時55分、白口岳に登り詰めると一気に展望が開ける。右手に最高峰の中岳の双耳峰、左手には伏せたお椀のような稲星山、その奥の雲の間から久住山が顔をのぞかせている。それらの山に囲まれた窪地には点々と小さな池があり、登山道が右に左に通っている。 【つづく】

【2003年九重厳冬温泉記@ A B C D

初夏の久住山行A 20050506-08

 
 隣の稲星山までは40分ほど(9時45分着)。頂上は岩に覆われ、なだらか。目の前には存在感のある久住山がそびえている。
 久住山との鞍部までは10分ほど。沢の冷たい水を空になった水筒に詰める。40分ほど登り返すと久住山頂だ(10時50分)。
 軽装の登山客が牧の戸峠から続々と登ってきている。
 南側は一面の雲海。その一部に黒い頭だけのぞかせているのはおそらく阿蘇の高岳だろう。硫黄山は盛んに白い煙をはきだす。その真下の岩だらけの窪地部分が、これから歩くコースだ。
 久住別れから左手に行けば最もポピュラーな牧の戸峠だが、今回は人がほとんどいない右手の急斜面の道を北千里浜へと下る。亜硫酸ガスのせいだろう、北千里一帯は木が生えない。賽の河原のような不気味さがある。岩だらけの硫黄山から、白い噴煙が真っ青な空に立ち上がる。鎌首をもたげたコブラか竜のよう。
 北千里浜は、霧が出たら迷いそうな地形だ。道標がわりの巨大なケルンが数十メートルおきにあり、コースを示す黄色い○印が数メートルおきにある。遭難も多かったろうと思ったら、案の定、大規模な事故があったという。
 北千里浜を横切って、硫黄山からつづく岩だらけの尾根を登り詰めると「諏蛾守越」の峠だ(13時15分)。有人の小屋の名残の鐘が残っている。気温14度。目の前の三俣山は昨日に比べてもぐんと緑が濃くなっている。
 西側に下っていくと、硫黄山の西側が望める。北千里側から見ると、ひとつの巨大な噴火口から煙を吐き出しているような印象だったが、反対側は、斜面のあちこちから白い煙が立ちのぼり、まるで温泉のよう。以前は硫黄を採掘していたといい、噴気口のきわまで車道がついている。
 15時に長者原に到着した。
 新緑、温泉、花の高原、殺風景な岩石平原、火山。これほどバリエーションが豊かで、気楽に歩けるコースは他にはあるまい。